夢を見ていた。その中で俺は・・・アルトリアという名前の騎士だった。

長い戦乱のなか養子であったが老騎士の跡取りとして育てられ、国を憂いながら育っていた。
戦乱を収めることができるのが王であるならば、国を救うため、戦乱を収める手ために誰よりも強くなろう。
そのためだけに剣を使おう。
その思いで、一心不乱に剣の技を鍛えた。

魔術師が新しい王が現れると予言した日、選定の場には岩に刺さった剣があった。
『この剣を岩から引き抜く者は、ブリテンの王になる者である』
予言に従い、幾多の高名な騎士が挑戦した。
私も騎士の端くれである。その場に居た。
結局、誰も剣は抜けず、馬上仕合で決定する流れの中、私は選定の剣の柄に手をかけた。
「きちんと考えた方がいいぞ。」
振り向くと件の魔術師が居た。
魔術師は言う。それを抜けば、人でなくなる・・・と。
もとより、我が身は騎士たる身。戦乱を収めるために人である前に騎士であるのだ。皆を守る為に多くの敵を
殺すものだ。皆を救うことができるならば・・・・

そして黄金の剣は我が手に収まった。
その崇高な剣を見つめた。自分の誓いをその剣に込めるように、強く、強く・・


Chapter 12 Side-A 襟懐・士郎


王になった私は、人である前に王としての責務を優先した。剣の魔力なのか人としての成長もそこで止まった。
良い王になろうと女性であることを隠し、完璧な王を求めた。

軍神、竜の化身と呼ばれ、赤い竜をモチーフにした旗を掲げ、常に先陣を切った。
十年、12の会戦すべてにおいて勝利を収め、王として駆け抜けた。振り返ることもなく、ひたすら駆け抜けた。

気がつくと、俺は王を遠くから見つめる存在になっていた。

空は高く流れる雲は早い。
明け方の澄み切った風の中、小高い草原の丘に剣を手に遠くを静かに見ている王がいた。
腰には立派な黄金の装飾の施された鞘を下げていた。
その顔は気高く、そして・・・寂しそうであった。その姿が一枚の絵の様に思えた。
神話につながるような絵。
もう誰も気安く王に接せなかった。崇拝される存在、人間からはかけ離れた存在だった。

ふと剣に目がいく。選定に使われた、王の運命を決定づけた黄金の剣ではない。
が、より戦いに特化したような見事な剣。強大な力を感じる、鞘もまた剣を収めるにふさわしい。


気がつくと、今度は血塗られた丘。何十という剣の墓と騎士の亡骸。その亡骸の山の上で王はボロボロの鎧で
剣を突き刺し、崩れ落ちるように慟哭していた。

誰も看取る者もいない、裏切りで終わった・・・・。

何を間違えたっ!? どこを間違えたっ!? いつ間違えたっ!? 何が悪かったっ!?
私の存在が間違えなのかっ!? 女が男と偽って王になったのがいけないのかっ!? それとも、私の運命が
この結果を生み出すのかっ!? ならばっ・・ならば・・私は・・・・

私が王にならなければ良かったのだ・・・・・

その慟哭が痛かった。

幾多の敵を退け、国を収め、民衆に熱狂的に支持された王。
その最期は、あまりにも報われなかった。実子である存在と戦い、倒れた・・・。

激痛が走る。

「・・・シロ・・・ロウッ・・・」

どこかで声が聞こえる。覚醒しかけたが、再び眠りに落ちた。


あかい・・・
赤い・・・
赤い日
赤い火
禍々しい何かの影
焼けただれる自分
悲しそうな親父
嬉しそうな親父
静かな親父
助けてくれた手

あかい・・・
赤い・・・
赤い日
赤い学校の廊下
死の影
笑う慎二
泣く桜
怒る遠坂
突き出る手

人形のような桜

・・・赤い床
・・・赤い血
・・・赤い
・・・あかい

・・・桜?

あぐっ、うぐっ、がぁっ
ズクン、ズクン、ズクン
ぐっ、くぅっ
ズクン、ズクン
はぁはぁ
ズクン

「・・・シロ・・・ロウッ・・・」
とおくからこえがきこえてくる。
・・・あるとりあ?
あるとりあってだれだ?
あるとりあはおれ?
おれはだれ?
・・・そうかゆめの・・・

そうだ、夢で見ていた。

「シロ・・シロウ・・・」
まぶしっ
そんなに呼ばなくても聞こえてるよ。あるとりあ。
ん?
なにか違和感が・・
「シロウ、大・・・すか」
「セイバー、頼むから落ち着いて。」
ん?だれだ?

「何を言っているのですかっ! 凛。わたしは十分落ち着いていますっっ!」
「・・・まぶしっ・・」
薄く開いた目に光が突き刺さる。痛い。

「シロウッ、大丈夫ですか?」
「ああ、あるとりあ、大丈夫だよ」
夢見心地で答える。
「なっ・・・・」
「アルトリアって誰よ?」
「だれ?」
声がした方に顔を向けて尋ねてみる。

「あ、あ、あ、あんたねぇっ! 命の恩人に向って誰?って何よ。」
なんか怒ってる。なんでだろう。
「んぁ?ここは誰であなたは何時?」
「あっちゃー、ダメだわ。まだぼけてるわ、コイツ。
・・・ってなんでセイバーまでぼーっとしてんのよっ!」

頭をぱしんと叩かれた感覚。

急に覚醒した。
がばっと起きようとして全身の激痛に顔をしかめる。
「あぐっ」
「ほらほら、ねぼすけさんは寝てなさい。」
なんか理不尽なことを言われているような気がする。
ぼやけた視線の先には赤い・・・・

赤い・・

肩を抑えて寝かそうとする手に逆らって、何とか上体だけ起こし、頭を振る。
「あっ・・・・・遠坂・・さん?」
そこには学校一の才媛がいた。
「あんたねぇ、そろそろ目を覚ましなさいよ。でないと怒るわよっ」
って、怒りながら言わないでほしい。
「あ、遠坂・・か。」

「あ、遠坂。じゃないわよ、もう。」
焦点があった先には赤い私服を着た遠坂がいた。
その横にはセイバーが呆然として座っている。
「セイバーも。」
「シロウ、どうして私の名前を・・・」
「名前って?」
遠坂がセイバーの方を向いて言った。

いまいち話が見えない。首をかしげる。
「今、シロウが私の名前を呼びました。」
なぜですかっ! とセイバーの目が訴えてくる。全然覚えていない・・・。
「俺、なんか言ったっけ? 夢で見たことは・・・あ」
「夢で見たのですか?」
「そう、夢で・・・」

そうだ、桜は?

「遠坂っ、桜は? 桜はどうした? 慎二・・げほっ」
急に大声を出したらせき込んだ。

「そろそろ、落ち着いて会話してくれるかしら?衛宮君」
遠坂のこめかみがぴくぴくと青筋が浮いて、なんか左腕が光ってきたように思います。先生。
「まっ、ま、まて、遠坂。落ち着いた。落ち着いたから。」
あわてて両手で顔を庇いながら言った。
ふう、やばいやばい。

・・・

「まず、桜ね。今のところ桜と慎二は行方不明よ。」
淡々と事実を告げる遠坂。
「なっ、行方不明ってどういうことだよっ遠坂!」
「アンタ、あの状況で、どうしろって言うのよ。私たちも死にかけたんだからねっ!」

あ、そう言えば・・・
思わず自分の胸を探る。ええい。わからん、服をたくし上げた。
「「きゃっ」」
女性の悲鳴の二重奏が・・
「あ、ごめん」
「ごめんっていう前に一言断りなさいよっ」
顔をそむけて真っ赤になった遠坂が言う。セイバーも真っ赤にしてうつむいている。

「いや、たしか胸を桜・・・」
愕然とした。桜の手が胸を・・
「傷は自然に治ったわ。セイバーの治癒力に感謝しなさい。
・・・しかし、絶対どっかで何かを消費してると思うのよねぇ。」
ぶつぶつ言う遠坂。

「遠坂。桜はどうしたんだ、あんなことができるなんて!」
「桜は、多分操られているわ。暗示なのか何なのかわからないけど。」
真剣な声に、心もち真面目に遠坂が言う。
「誰がそんなことをっ! 慎二か?」
「慎二じゃないわね。多分、慎二の言う”御爺様”っていう存在よ。」
「桜に爺さんなんていたっけ?」
「いるらしいわ、信じられないけど。あ、そうそう、慎二も多分操られてるわ。」

「えっ」
「でないと説明がつかないもの。」
「だとしたら、桜が危ない!! 桜を探さないと。」
「落ち着きなさい。そんなことは十分わかってるわ。」
「だったらっ「間桐の家には誰もいないわよ」」
声がかぶる。遠坂の視線が突き刺さる。俺と変わらず真剣だった。わずかに焦燥感も感じられた。
「え?」
「間桐の家には誰もいないって言ったの。アーチャーに見て来てもらったのよ。」
「そうか、でも、探さないと・・」
「ああ、それについては、たまたま専門家がいるから、専門家に任せることにしたわ。」
苦笑する遠坂。
「んあ?」
なんか呆けた声が出た。
「専門家って、探偵でも雇ったのか?」
「本人は人探し屋って言ってるわ。ついでに煎餅屋のオーナーだって。」

「・・・遠坂、悪い。ちょっとわかるように言ってくれるか?」
「本人が言ったことをそのまま繰り返しただけなんだけど、やっぱりわからないわよねぇ」
遠坂はくっくっくと笑う。
セイバーは・・・よくわからないといった顔をしてる。
「アーチャーのことよ。」
「はぁ?・・・アーチャーに探してもらってるのか?」
「そうよ」
「だったら、そう言ってくれ。遠坂。」
「うるさいっ、弟子がつべこべ言わない!」
そんなの理不尽です。

ん?なんか妙な単語が。
「とおさかさん?弟子って、なんでしょうか?」
セイバーが大きくため息をつき、遠坂がにししっと笑った。はて?なんでさ。
「シロウ、申し訳ありません。」
「ん?なんでセイバーが謝るんだ?」
「アンタはねぇ、今日の昼から私の弟子になったの。」
起きてから、何回驚かされただろうか。

どう反応したらいいか判らないでいると
「桜を探すにしろ、戦うにしろ、どのみちサーヴァント戦よ。で、アンタが不甲斐ないからセイバーが
戦えないの。分かる?だからセイバーがあんたの体を、私が魔力を鍛えることにしたの。
文句は言わせないからねっ。」
遠坂が、がぁぁって感じで吠えた。

「お、おう、とりあえず、さんきゅーな。」
とりあえず、感謝した。そうしないとやばそうな気がしたからだ。

「そう、じゃぁ、とりあえず、私の部屋は離れの洋室にしたからね。勝手に覗いたら殺すわよ。」
「まあ、離れは空いてるから・・・って、ここに何で泊るんだよっ」
「だって、桜の探索にアーチャーに動いてもらってるじゃない? だったら私の警護は誰がしてくれるのよ。
サーヴァントがいきなり襲ってきたら、まともに戦えるのってセイバーしかいないでしょ?
だからセイバーの居る所に来たのよ。単純じゃない。」

セイバーがため息をつく。籠城戦はあまり好きではありません。とかぶつぶつ、つぶやいている。

いや、まあ、そういう風に言われてしまうと、そうなんだけど・・
「いや、でも女の子「あ~ぐだぐだうるさい! 弟子は師匠の言うことを聞く!」」
「・・ハイ」
「判ったらいいのよ、じゃあ、晩御飯できてるから、着替えたら居間に来なさいよ。セイバーも手伝って。」
そういって遠坂はセイバーを促して立ち上がる。
「遠坂、その、いろいろとありがとう。」
「ただの気まぐれよっ」
遠坂はふんって顔をそむけて出て行ったが、顔は赤かった。
「それではシロウ、細かい話は凛の料理の後にしましょう。」
セイバーも出ていった。
ふと周りを見たら、窓は暗かった。時計をみると11時になっていた。
半日寝てたのか・・・・
さて、体の確認がてら着替えて居間へ行こうか。


Chapter 12 Side-B 襟懐・凛


夕方、アーチャーが帰って来た。
「どうだったの?」
首をふる。
「誰もいなかったの?」
「そうだね。、もぬけの殻だったよ。」
「そう。」
しばらく考え込む。
アーチャーは勝手にお茶を入れ始めている。なんか包みを持ってるけど、何だろう。

ぱり。
・・・・煎餅。
「この粳米はどこのだろう・・」

アーチャーの容姿とやってることに相当ギャップがあるんですけど。
視線を感じたのか、食べる?と聞いてきた。
かぶりを振って断る。
よし、決めた。
「アーチャー、帰って来て早々悪いけど、付き合って。」
「いいよ。」
・・ところで、お金はどうしたの?とはなんとなく聞けなかった。

セイバーにしばらく出かけてくると伝え、教会に向った。

・・・

教会の外でアーチャーに待っててもらい、中に入った。
「綺礼、いるんでしょう?」
「ほう、誰かと思えば。」
説教壇の横の扉から綺礼がでてきた。
「どうした、怖くなったかね。だったら家に引きこもっておけばいい。」
「ふんっ、誰に向って言ってるのよ。今日来たのは、アンタに聞きたいことがあるからよ。」
「ふむ、迷える子羊かな。ははは、そんな性格でもあるまいに。」
「いちいち、うっさいわね。」

毎度のことながら神経を逆なでする口調は気に入らない。
「私も忙しいのでな。手短に頼むぞ。」
「じゃあ、間桐の御爺様って知ってる?」
「ほう、お館様のお出ましか。」
「知ってるの?」
「間桐臓硯。とうに老衰したかと思っていたが、いまだ現役とは。人の血を啜る妖怪というのは本当かもな。」
「なっ、血をすするって、吸血種なの?」
先日のニュースを思い出した。

「死徒ではないが、間桐の魔術は吸収と強制でな。六代前の魔術師であった臓硯は、際立った虫使いだったと
聞く。で、当の本人は他人の血をすするらしい。」
「虫・・符合するわね。」
「遭遇したか?」
「かもしれないわ。でも六代前って・・・」
「確実なことは知らんが、聖杯戦争の令呪を編み出したらしいしな。間桐一族の大魔術師だ。ヤツが表舞台に
出てきた以上、確かな勝算があっての事だろうよ。
それをバックにつけたということは間桐のマスターが間桐家最大最凶の援護を受けているということだな。」
「どういうこと?臓硯って数百年も生きてるってことになるの?」
「他人の血を吸う妖怪だ。人の血を吸う事で若さを保ち、肉体を変貌させ、生き抜いたと聞くが、
はてさて信じていいものやら。
まあ凛の父親の話では既に死に体、白日の下には出られないという事だったがな。」

「そう、となると最悪のケースを考えておくべきね。」
顎に手を持って行く、いつもの考える癖が出る。
「まあ、リスクを考えるとそうなるな。」
「わかったわ。」
「それで終わりかね?」
もう帰れっていう感じで綺礼が聞いて来る。
「あとは、確認だけよ。」
「なんだ?」
「今回の聖杯戦争、おかしいわ。」
「ほう、どこがどうおかしいのかね。」
綺礼が面白そうに聞いて来る。
「臓硯が出てきたり、マスター達が固まってたり、変なサーヴァントが出てきたり、とにかくおかしいわ。」
「ほほう、ではどうあれば、おかしくない聖杯戦争なのかね?」
「なっ」
「聖杯戦争とはサーヴァントを召喚し、戦い合い、最後に残ったものが聖杯を得る。それだけだ。
今の聖杯戦争がその定義で考えておかしいかね?」
「・・・」
くっ、確かに、おかしい。というためには”おかしくない”のを知っておく必要がある。
「反論はあるまい。だったら、さっさと帰れ。」
「・・・わかったわ。」

礼拝堂を出て深呼吸する。体が何かに変質したように感じられるから、ここに来るのは嫌だった。

アーチャーは木陰に立っていた。
「ありがと、じゃあ一旦遠坂の家に帰りましょう。」
歩き出したが、アーチャーは立ち止まったまま。
「どうしたの?」
「いや、別に。いこうか。」
踵を返して歩き出す。強い風が吹いた。

私の横でアーチャーの黒いコートが翻る。

風を遮ってくれたのかな?そんなわけないわよね。


遠坂の家で着替え、担任に電話し、いろいろと泊りの準備や買い物やら雑用をこなしてから衛宮家に戻った。
セイバーが迎えてくれた。
「士郎の様子は?」
「特に変わりませんね。」
「そう。」
よっこいしょと荷物を置く。
「ところで、凛、その荷物は?」
「え?これからここに泊るのよ。」
「どう言うことですか?」
「まあ、とりあえず居間で話ししましょう。」

「それでね。」
「セイバー、食べる?」
「あ、頂きます。」
ぱりぱり。
「ちょっと。」
「なかなか、これは美味しいものですね。」
「まだまだ、焼き方と醤油の塗が甘いかな。」
「おーい。」
「そうなんですか?」
「うん。」

「・・・あんたら、話を聞けーー」
放ったガンドはセイバーに当たる前に消滅し、アーチャーには何故か当たらない。というより、狙いがずれる。
「凛、いきなり攻撃するとは酷いです。」
「ははっ」
「あんたらが人の話を聞かないからよっ」
ぜーはーぜーはー
「まあまあ」
アーチャー、もともとはあなたがセイバーに煎餅なんかあげるからいけないのよ。

「・・・まあ、いいわ。で、これからなんだけど。」
セイバーが姿勢を正す。アーチャーは変わらず。相変わらず力が抜ける。

「アーチャー」
「なに?」
「桜を探してもらえないかしら。人探し屋だったわよね?本職のお仕事になると思うけど。」
「費用は・・」
「えっお金取るの?」
なんて守銭奴な奴。
「・・と思ったけど、こっちのお金もらっても仕方ないか。探してみよう。」
アーチャーが正座して言った。
本職のときは真面目なのね。
「でも取り合えず、単独行動だと必要でしょ?」
封筒を差し出す。中見は言わずものがな。
アーチャーは黙って受け取った。

「で、セイバーは士郎と私の護衛をお願い。」
「護衛ですか?」
「ええ。勝つことはできないけれど、持ちこたえることはできるでしょ?」
「負けることなどありえません。」
「じゃあ、セイバーが喰いとめてもらっている間に私が後ろから攻撃する。ってことでいいわね。」
「時間稼ぎ・・ですか。仕方ないですね。」
「じゃあ、決まりね。」
なんとなく、押し切った。
さて、しばらくは耐えることになるわね。耐え切れるかな。反撃する為にも士郎には頑張ってもらわないと。
アーチャーを単独行動に出してまで桜を探す、この判断が正しいかどうか、今はわからない。
でも、正しいと信じたい。
「桜・・・」
つぶやきが漏れる。

~interlude 1~


「言峰。あのまま帰してよかったのか? 邪魔者は少なければ少ないほどいいだろう。」
「まだ、利用価値というより不確定要素があるようでな。」
「なるほどな、アレは餌か。」
「マキリの翁も出てきたのは意外だが、我々もそろそろ動こうとするか。」
「ようやくか。体がなまっておるわ。ところで言峰よ。重ねて問うが、本当に聖杯に興味はないと?」
「願望機に用はない。それはおまえとて同じだろう。」
「では、何故マスターになぞになった?望みがないのであらば、聖杯など要らぬだろうに。」
「聖杯なぞいらんが、その中身には関心があるのでな。」
「ふははっ、お前も立派に歪んでいるな。」
「歪みのない者などない。」
「たしかにな。」

「さて、下らぬ問答をしていても仕方があるまい、手駒から情報を集めておるのだろう?
どこから落とすのだ?」

「とりあえず・・・」


~interlude out~


~interlude 2~

案外、人使いが荒いな。
動けるものはとことん動かす・・・か。まあ、妥当だろう。
本業とは言え、情報屋もおらず。さてどうするか。
選択肢は意外に少ないか・・・
寺に行くか、白い少女のところに行くか・・・
さて、どうするか。
月は相変わらず、冴え冴えとしている。
やはり夜は心地よい。


あと何日持つだろうか。
「さて。」
呟きは風に融ける・・・

~interlude out~