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 それは、午前中の特訓が終わって昼食を食べた後だった。
セイバーは道場に行き、アーチャーは・・・どこいったんだろ?
「遠坂、アーチャーは?」
向かいに座って紅茶を飲んで寛いでいる遠坂に聞いた。
「さあ、散歩じゃない?」
「大丈夫なのか?」
「何が?」
「一人で出かけて」
「大丈夫じゃない? あの状況から帰ってこれるんだもの。」
「そうだよな。」
なんとなく間が持たなくなり、何気なくTVをつけた。
事務的なアナウンサーがニュースを伝えていたが、
”本日未明、新都で女性ばかり10人の死体が発見されました。現在、死因について究明中です。
また先日の通り魔事件との関連を警察が調べています。”
というショッキングな内容だった。
ふと嫌な予感を感じて遠坂の方を見ると、怨敵をにらむような顔で画面を凝視していた。


Chapter 15 Side-A 外典・士郎


がちゃんっと音を立てて遠坂が手に持ったティーカップを置く。あれは置くと言うより打ち付ける、という方が正しいと思う。

「と、遠坂?」
おそるおそる声を掛ける。
「・・やってくれたわね。」
遠坂がつぶやく。
「なんだ? 遠坂、この事件のことか?」
「ええ、そうよ。私の管理地で、ここまで大事にするなんて許せないわ。」
「知っているのかっ! 犯人」
「推測よ、今のところはね。でも限りなく黒に近い、と思ってるわ。」
「じゃあ、警察に連絡しないと。」
「なにボケた事言ってるのよ。」
遠坂がぽかーんとした顔をした。

「だって、犯人知ってるんだろ? だったら、警察に捕まえてもらって」
「これはこちら側の人間の仕業よ。警察が信じるわけ無いじゃない。」
「え?あ。そうなのか?」
「死因は伝えてないけど、こないだの通り魔事件との関連ってことは失血死かそれに近いんだと思うわ。
で、誰それがやりました。血を吸い取りました。って言って警察が納得すると思うの?」
それって・・
「・・・吸血鬼、って実際に居るのか?ひょっとして。」
「居るわよ。知らなかった?」
「・・・知らなかった。って、まてよ、吸血鬼がこの町に居るってのか? 無差別に襲ってるのか?」
「そうよ、間桐臓硯って名前の吸血種がね。」
この上もなく冷ややかな声で遠坂が言い放った言葉に衝撃を受けた。
「間桐って・・・ひょっとして?」
「そうよ、間桐臓硯。慎二と桜の・・・”お爺様”よ。」
「そんな、ばかな・・・」
「まあ、慎二と桜は血を吸う化け物じゃないけどね、臓硯は違うらしいわ。綺礼が言ってたわ。」
遠坂が苦々しげに告げる。

「じゃあ、桜と慎二を操ってるのも「臓硯ね」」
「早くやめさせないとっ!」
思わず立ち上がる。
「落ち着きなさい。どこに居るかも分かってないのに、何もできないでしょ?」
「遠坂っ! 桜が操られて、攫われて、無関係の人が殺されてるんだぞっ! なのに、何もしないつもりなのかっ? 誰も助けられないのかっ!」
思わず両手で机をバンッとたたいた。
「そんなこと、言われなくてもわかってるわよっ! 私の管理地で好き勝手してるのよ! 私が一番許せないわよっ! でも尻尾も掴めてないのに、何もできないじゃない。」
遠坂が眼を爛々と光らせて睨んで来る。
しばらくにらみ合いが続いた。

「・・・悪かった、遠坂。」
冷静に考えると、遠坂の言うとおり、今は何もできない。せいぜい警官の真似事くらいしか・・・
「こっちも説明が足らなかったわね。」
遠坂がぷいっと横を向いて、つぶやく様に言う。
「今は何もできないけど、先回りして防ぐことはできるかもしれないわ。」
「どういうことだ?」
「くだらない話だけど、前回と今回の共通点は夜の新都で女性ってことなのよ。」
「遠坂? まさか。」
まさか、遠坂、お前。自分が囮になるって言い出すつもりじゃ・・・
「だから、士郎。」
「まて、遠坂、お前が囮になるなんて、そんなの反対だ。」
遠坂がこっちを向く、形容しがたい表情をしている。笑いをこらえているような、怒っているような。

どこかで音がした。そう、この音。 カコーン。 鹿威し part-2。

なんか、俺はとんでもない間違いをした様・・な・・・、嫌な予感がする。最近直感が鋭くなって来たような・・

「へぇ~、ふぅ~ん。衛宮君は反対なのね? なんで反対なのかしら?」
あ、赤い悪魔が降臨した。
「え、い、いや、そんな、女の子が危険なことをやるなんて反対だ・・・」
遠坂のニヤニヤ笑いが気になって、段々声が小さくなっていく。
「そう、衛宮君は女の子が囮になるってのは反対なのね。」
嫌な予感は、とてつもない悪寒に変わってきた。
「い、いや、女の子が囮というかそんな危険な・・・」
「そう、女の子がだめってことは男の子だったらいいのね? よかったわ。どう切り出そうかって思ってたのよ。」
ふふふっと邪悪な笑みを浮かべる赤い悪魔。
「と、とおさか? あ、あの、なんだ、ひょっとして・・」

「そうよ士郎、アンタ、女装して夜の新都を徘徊しなさい。」

「なななななななななななななななななななななななっ!」

「女の子は危険なことしちゃだめなんでしょ」
うふふっと笑う遠坂、とっても邪悪です。
「い、い、い、いやだぁ~」
思わず、そこから逃げ出した。
「こらまて、士郎~」


Chapter 15 Side-B 外典・凛


嫌がる士郎を説得しようとしたけど、結局4人で夜の新都を巡回することで落ち着いた。
何故かセイバーが熱烈に私を支持してくれたのだけど、士郎の頑なな拒否に折れた格好。
「今日は柳洞寺に行こうと思ってたのに。」
前を歩くアーチャーの黒い姿を見ながらつぶやいた。
「凛、柳洞寺は逃げたりしませんよ。」
「でも、キャスターが何をしているか分からないじゃない、セイバー。できれば早いうちに偵察しておきたいのよ。」
「それは確かにそうですが。それにしても。」
隣のセイバーが後ろを見る。つられて後ろを見る。そこには警戒感丸出しの士郎がいた。
「士郎、いい加減、機嫌直してよ。」
「・・・いやだ」
「シロウ、決して私は女装をしたシロウを見たいから支持したわけでは・・」
士郎がじろっとセイバーを見る。あ、ちょっと怖い。
「いや、多少見てみたい気も・・・」
士郎の視線に負けたのかセイバーがあわてて前を向く。
あっちゃぁ、やりすぎたわね。まあ、しばらくは仕方が無いか、ちょっと時間を空けよう。
それから人気の無い新都を歩き回った。
警官が巡回していたけど、アーチャーが事前に察知してくれるので特にトラブルも無かった。


「おや?」
しばらくしてアーチャーが立ち止まる。このパターンは、嫌な予感の前兆。いやだなぁ。

「どうしました。アーチャー。」
「士郎君が危ないな。」
危ないって雰囲気を微塵も感じさせないアーチャーが言う。

え?セイバーと顔を見合わせ、同時に後ろを見る。・・・士郎が居なかった。
「シロウッ! どこですかっ!」
セイバーが周りを見回しながら叫ぶ。ビルに反響して声だけがむなしく響く。

「こっちかな。」
のんびりとアーチャーがある方向を向く。
「分かりました。こっちですね!」
セイバーが武装を纏い弾けたように走り出す。
銀色の風が過ぎ去っていく。
「ちょちょっと待って、どこ行くか分かってるのーっ?」
セイバーの姿は既に小さくなっていた。
「もうっ、あの猪突猛進娘」
置いてけぼりになりそうだったので、身体強化の呪を紡いで足を強化する。
「中央公園かな、セイバーは誘導するから大丈夫」
横にいるアーチャーが告げる。
「分かったわ、公園ね。」

中央公園は近かった。
なんとか公園前でセイバーに追いついた。というよりセイバーが迷ったから一緒になったと言うのが正しい。
結界が張られている。すぐに分かった。でも用途がよくわからない。人避けでもなさそうだし・・・
「結界が張ってあるから気をつけて。」
そう声を掛けて中に入った。
瞬間、靄の中を歩いているような感覚に捕らわれる。
「感覚劣化の結界・・・?」
多少感覚が落ちるが魔力や戦闘力が落ちるわけではない、なんでこんな結界を?
思わず顎に手がいく。
「こっちだね」
私の思考を断ち切るようにアーチャーの声が響く。こんなときでも茫洋とした口調は変わらないのね。
「シロウッ!」
公園の針葉樹エリアで呆然と立ち尽くす士郎を見つけた。
セイバーが駆け寄る。

「やあ、皆でお出ましだね。おびき出す必要もなかったよ。」
慎二の声が響いた。周り中から。
「なっ、慎二!」
「こんばんわ、遠坂、良く会うねぇ」
嘲る様な口調が癪に障る。

「慎二っ! 桜はどこ!」
「桜? 知らないよ。多分お爺様のとこだろ。今の僕には、どうでもいいよ。」
声がそこかしこから聞こえる。サラウンドの映画館に居るよう。
「メイガスッ、シロウに何をしたのですかっ!」
セイバーの悲痛な叫びが聞こえる。
「どうしたの? セイバー。」
「シロウがっシロウがっ」
シロウの両肩を両手でつかみ士郎を揺らしているが、士郎の反応が無い。
思わず駆け寄る。
「慎二! 士郎に何をしたのっ!」
アーチャーに肩をつかまれた。
「アーチャー?」
振り返ってアーチャーを見る。次の瞬間アーチャーに抱えられて5mほど後ろに飛ぶ。
セイバーも士郎を抱えて横に離れていた。
「相変わらず、サーヴァントがいると不意打ちもできないな。」
相変わらず慎二の姿は見えない。
そうか、感覚劣化の結界はこの為ね。自分の位置がわからないようにして不意打ちで攻撃するための・・・。
姑息なやつ。思わず腹が立つ。
「衛宮に何をしたかって? そんなの衛宮に聞いてみろよ。ちゃんと聞けたらだけどな、あはははっ
じゃあ、そろそろ衛宮。はじめろよ。」
慎二が声を掛ける。


「・・・セイバー、・・・遠坂を殺せ。」
人口音声のような感情の無い声が響く。
離れた所に居たが、その言葉は耳に突き刺さった。
「えっ」
士郎が何を言い出したのか、一瞬分からなかった。
え? 私を・・・殺せって?

感情の無い声がセイバーを愕然とさせる。
「なっ、シロウ、あなたは今何を言ったのか、わかっているのですか?」
「セイバー、遠坂を殺せ。」
抑揚の無い声が繰り返す。
「そ、そんな。」
セイバーが思わず後ずさる。

「ほらほら、早くマスターの指示に従わないと、衛宮の命の保障は無いよ?」
慎二の声が、悪魔の声のように響く。

士郎が隠し持っていたナイフをゆっくりと自分の首に突き刺す。
プツッ
やけに大きく皮膚を裂く音が響く。実際は聞こえていないのかも知れ無いが、士郎の首筋に流れる赤い線は
それが事実だと宣言していた。
「シロウーッ!」
セイバーが叫ぶ。ナイフを取り上げようとする前に慎二の声がかかる。
「衛宮に触ったら、一気に突いちゃうかも知れないよ? あはははっ」
セイバーの動きが止まる。

我に返った、士郎も操られている。いつの間に?
「早くしたらどう?衛宮が死んじゃうよ?」
「ま、まてっ」
ぎりぎりと歯をかみ締める音が聞こえる。顔面が蒼白になっているセイバー。
「ほらほら、あんなに血が流れてるよ。」
セイバーが俯く。俯きながら呟きが聞こえる。絶望の、細い声。
「凛、私は貴方が好きです。貴方であれば・・
・・でも、・・でも、今はシロウを・・・シロウを守らなければなりません!!」

アーチャーがセイバーと私の中間に立ち塞がる。

「どいてください。アーチャー、私は・・、私は・・」
セイバーが顔を上げる。泣いているような顔。
次の瞬間セイバーが立っていた所がはじける。
圧倒的な踏み込みで迫る。目に見えない剣を思い切りアーチャーにめがけて振り下ろす。
アーチャーが横に飛ぶ、飛ぶ方向を予測していたように剣を切り返す。凄まじい火花が飛び散る。
その反動を利用して更に飛びずさるアーチャー。完全には回避できなかったのか。膝を着く。
私も誰かに腕を掴まれたように引っ張られる。
「すみません、アーチャー、凛!!私は・・私はっ・・」
セイバーは泣いていた。泣きながら切りかかってくる。
「あはははっ、いい見世物じゃん? ほら、衛宮、お前のサーヴァントは忠実だね。美しいね。あはっは」
慎二の馬鹿笑いが聞こえる。

ぼとっ

微かな、しかし注意を引くには十分な音がした。
全員の動きが止まった。

士郎がナイフを落とした音だった。
「な、何してるんだ、衛宮。早く拾え。」
「無駄だよ。腱を切らせてもらった。」
アーチャーが答える。
「シロウッ!!」
セイバーが士郎に駆け寄る。
「何だって? いつの間にっ? まあいいや、じゃあ衛宮。舌噛んで死ねよ。」
一転して冷酷な声が命令する。
「くっ」
指示通りに士郎が舌を噛む、同時にセイバーが士郎の口をつかむ。遅かった。
セイバーの手が真っ赤に染まる。

「だめっ、セイバー、口を空けさせてっ、舌が喉塞いで窒息するわっ!」
セイバーが無理やり士郎の口に手を突っ込み口を開ける。
ごぼ、ぐぼっ
士郎が痙攣する。士郎とセイバーの元へ走りよった。
戦場で経験があるのだろう、セイバーはシロウを横にして器用に舌を引っ張って気道を確保していた。
「どう?大丈夫?」
「とりあえず窒息は防げました。でも・・」
士郎の意識は無いようだ。

「せっかくだったのに、面白くないなぁ。」
おもちゃを取り上げられたような不貞腐れた慎二の声がした。

「ようやく見つけた。ついでに、からくりも。」
アーチャーがこっちの喧騒には、まるっきり関係ないとばかりにのんびりした声で言い、立ち上がる。
次の瞬間、周り中から、何かぷつっという音が立て続けに鳴り響く。

「セイバー、首筋を。」
アーチャーの声にセイバーと顔を見合わせ、士郎の首筋を見る。盆の窪のあたりから5mmくらいのピンク色の
尺取虫のようなものが出てきた。
「きゃっ」
気持ち悪くて思わず叫んだ。
セイバーが指でつまんで潰す。
「こ、こんなものが士郎を・・・」
ぎりぎりと歯軋りをするセイバー
「許せない、許せない。よくも・・・」

「そこにいたのか。」
のんびりした声が続いて響く。死神の声が。
「うがぎゃがぁっががっ」
遠くの木から何か大きなものが落ちた。

「そこか、メイガス。許せん。お前だけは許さない! 凛、士郎を頼みます。」
そういってセイバーが立ち上がる。士郎を受け取って横抱きに抱える。
目の前のセイバーから青いオーラが燃え上がる。圧倒的な魔力が迸る。
一気に飛び込もうと膝を曲げたセイバー。

「それ以上、近寄ることは許しません。」
どこから現れたのか、私達の前にライダーが立っていた。霊体化して近くに潜んでいたのね。

「ライダー、貴方のマスターは最悪のメイガスですね。どきなさい。」
どこにこんな威圧感のある声が、この少女から出せるのか?というぐらい圧倒的な声の圧力。
「マスターかどうだかどうでもいいですが、これ以上近寄ることは許しません。」
ライダーはそれを受け流す。そして顔を覆っている目隠しを取った。
遠くからでも見えた、見えてしまった。
灰色の眼、水晶細工のように見えるその眼。瞳孔は四角、虹彩は瞳孔の四角を維持していた。
人にあらざる眼。神は愛でたのか呪ったのか。灰色の眼はこの上なく異質で、同時に人が持つにはあまりにも美しすぎた。
圧倒的な、魔眼。見たことは無い。でも分かってしまった、あの魔眼は・・・・・最高位の魔眼。神代に存在した石化の魔眼。


「いけない、だめっ! 目を伏せて!!」
もう、遅いかも知れない。しかし、叫ばざるを得ない。
魔術刻印の中から自分の魔術抵抗を上げる回路に目一杯魔力を通す。

「おろかな。目線を外した位で、私の魔眼から逃れられると思っているのですか?」
ライダーの淡々とした声がする。
全身が硬直する。体の末端から凍結していくような感覚。
なんとかそれを押しとどめる。脂汗が出る。

「ライダー、愚かなのは其方だ、私には利かない。」
セイバーが斬りかかる。ぎぃんっと鋼を打ち合う音が鳴り響きライダーが受ける。
「多少は利いているようですが、石化しないとはさすがにセイバーですね。」
「お前など、このままで十分。」
青と紫が離れる。
再び斬りかかるセイバー。蛇のような動きと手に持った短剣で斬撃をかわすライダー。が、完全にはかわし
切れない。徐々に全身に血が流れていく。
「ちっ」
「無駄です。ライダー、貴方は私に勝てない。」

そうだ、アーチャーは?
アーチャーの方に眼を向ける。なんとか顔が動いた。
「えっ!?」
アーチャーはすでに両手足、腰まで石化していた。
「アーチャーッ!!!」
その叫び声が聞こえたのかセイバーがこっちを向く。
その隙にライダーが離れる。
「くっ、しまった。逃すかっ!」
セイバーが追いすがって斬りかかる。

「アーチャーッ! アーチャーッ! 耐えてぇっ、石化しちゃ駄目ーーっ」
叫んだ。右手の令呪が輝く。
右手が熱い、焼け火箸を押し当てられたような鋭い痛みを感じる。同時に全身が熱くなる。
「つっ」
アーチャー、がんばって。心の中で声を掛ける。

遠くで何かが動いた。
叫び声を上げて何かが落ちた場所・・・慎二!?。
なんとか左手を掲げ、ガンドを連打する。なんかシルエットが人型と違ったような・・・

アーチャーに眼を戻すと徐々に石化が解けつつあった。なんとか間に合ったようだ。

セイバーとライダーは相変わらず戦っているが、やはりセイバーが押している。ライダーは何とか回避しているようだが、このままだとすぐに決着がつくだろう。
「セイバー、貴方のマスターが死にそうですよ。」
ライダーが不意に声を掛ける。
「何?」
セイバーがこっちを向く。
「ばかっ!」
思わず叫ぶ。
一瞬の隙を突いてライダーが逃げ出す。
「あっ。」
しまったという顔をしたセイバー。しかし全力で逃げるライダーにはもう追いつけない。
仕方ないという風に頭を振ったセイバーは慎二らしきものが落ちたあたりを探索してから戻ってきた。
真っ先に士郎のそばによる。
「とりあえず、大丈夫だと思うわよ。」
声をかける。
ほっとした顔をするセイバー。
「すいません、また逃がしてしまいました。逃げ足は超一流です。」
「慎二は?」
セイバーが苦虫を潰したような顔をする。
「居ませんでした。ライダーとの戦いの間で逃げたのかどうか分かりませんが。しかし・・・」
何かを考えるように、言葉が途切れていく。
「どうしたの?」
セイバーの様子になんとなく違和感を感じて聞いた。
「いえ・・・凛、実際に見てもらったほうがいいと思います。」
「わかったわ。」

「・・・凛、すいません。」
セイバーが神妙な顔で謝って来る。
「・・・」
「凛、あの時は、あの、その・・・」
無言でいるとセイバーが慌てだした。捨てられた子犬のように上目使いで、こちらをちらちらとみながら
あたふたと弁解の言葉をつくろっている。言葉になってなかったけど。
「ぷっ!」
思わず、セイバーの頭に犬の耳がついて「くぅ~ん」と鳴いてるイメージを想像して吹き出してしまった。
「凛?」
「あはははっ、いいわよ、もう。そんな顔されちゃ、怒れないわよ、うぷぷぷ。」
「リンッ、私は真剣に、今回のことについて・・」
「いいって、次に挽回してくれたらそれでいいわ。」
手をひらひらさせて言う。
「凛・・・本当に感謝します。」
セイバーは顔を伏せ、泣きそうな顔と声だった。

「そうです、アーチャーは?アーチャーはどうしました。」
そう聞かれてアーチャーの方を見る。
アーチャーが倒れていた。
「アーチャーッ!」
士郎を放り出して、あわててアーチャーに近寄る。
閉じていた目を開けて私を見た。
「大丈夫だ、しばらく休めば動けるようになる。」
「生きてたのね。よかったぁ。」
安堵でペタンと座ってしまう。ちょっと眼が潤んでしまった。
「セイバー達と先に帰った方がいい。ここは危険だ。」
寝ながらアーチャーが言う。
「何言ってるのよ、ぶっ倒れた人を置いていけないじゃない。みんなで帰るわよ。」
「頑固だな」
「うっさいわねっ、怪我人は黙ってなさい。」
思わずぷいっと横を向く。向いた方向はセイバーが探索していた場所。
そうだ、何があるんだろう。
「ちょっと待っててね。」
アーチャーに言い残して、そこに行った。

「なっ!! 何よ、これっ!」