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~interlude~


”桜よ、遠坂の娘は今、衛宮の小僧と同衾してるぞ”
お爺様の言葉が胸に突き刺さった。
なんで?そこは私の場所なのに。なんで遠坂センパイが。
私の場所を取らないで。

”お前が殺しかけて、遠坂の娘が救ったのだからな。情を感じても仕方が無いであろうよ。”
え?
お爺様はなんていったの?
私が、私が、私が殺しかけた?先輩を?

”覚えていないのか? 衛宮の小僧の血を。突き刺した胸の感触を。”
アレは夢では?

でも、覚えてる、あの感触。

あれは私が・・・・?

私が・・先輩を・・・殺した?

いやぁぁぁぁ

”彼の者はあきらめるがよい。桜よ。”

いやぁぁぁぁ


~interlude out~



これは夢?なんかふわふわしてる。
ここは新都の中央公園?

オナカスイタ

公園の中で先輩がセイバーさんに抱きしめられていた。なんでなの?
すぐ近くに遠坂先輩も居た。なんでなの?
そこは私の場所なのに。なんで遠坂先輩がいるの?

タベタイ

そこは私の場所なのに!!
姉さん、そこだけは取らないでっ!!

イタイ、イタイ、イタイ

私は一体、何?

歩いている感覚は無いのに、視線が移動していく。

いつの間にそんなところまで移動したのか、新都の高層ビル街に居た。
静まり返ったオフィス街はビルの墓場の様だった。冷たい蛍光灯が窓を飾っているが、冷たい印象しか受けない。
雪が降ってきた。更に寒く感じる。

”ちょっと、君。こんなに夜遅くに出歩いちゃダメだよ。”
振り返るとがっちりした2人の警官がいた。ついさっきまで乗っていた自転車のスタンドを起こして近寄ってくる。
”ちょっと聞かせてもらえるかな?”

タベタイ
え?

”おい。君?”
肩をつかまれた。

ぐしゃ。べしゃ。ばぎ。
”ぎゃぁぁぁぁ、た、た、たすけグボッッ”
”な、な、な、なんだ、お前は、ひぃぃぃ、た、た、たす”
”あ゛あ゛あ゛あ゛・・”

なんか潰した。

これは夢?なんかふわふわしてる

この夢はどうやったら目覚めるの?

もう、目覚めないのかな?

誰か、助けて。

オナカスイタ

お願い、助けて。

タベタイ

誰か、たすけてください。

景色は緩やかに変わっていく。


Chapter 17 Side-A 眩惑・凛


「もう、何が何だか分かんないわね」
衛宮家の居間で誰にともなく呟く。
目の前には急須とお茶の入った湯のみが湯気を立てていた。
少し前につけたストーブが赤々としているが、あまり温さを感じない。
にぎやかなはずの居間も、主人が居ないと寒々しく感じてしまう。
廊下の障子が開き、白いブラウス姿になったセイバーが入ってくる。
「とりあえず寝かせてきました。」
問いかけの視線に、そう答えて向かいに座った。
「そう。今度は一晩かかるかな?」
「どうでしょうか。治癒力は上がって居るはずですが。」

セイバーの湯のみにお茶を注いで渡した。
「ありがとうございます。ですが・・・」
なぜか、もじもじしているところをみてピンときた。
「あ、夜食ね。労働したからお腹すいたのね。」
「え、いや、あの、その・・・・ハイ」
真っ赤になって俯いて小さな声で肯定するところは、どうみても剣の騎士とかじゃなくて、小動物?
妹のような感覚さえ感じてしまう。そこまで考えてふっと、桜のことが思い浮かんだ。
早く助けてあげないと・・・・
「凛?」
訝しげなセイバーの声が響いた。
「えっ、あ、そうね。ありあわせのものでもいいかしら?」
慌てて立ち上がり、キッチンに向かいながら聞いた。
「凛、感謝します。」

残り物でチャーハンとわかめスープを作って食べた。いや、食べさせた。2人前くらい。
「シロウの和食と凛の中華はいつ食べてもおいしい。」
「じゃあ、今度セイバーにも教えてあげるわよ。」
「いや、あの、その、私は料理など・・」
「・・これが落ち着いたらね。」
慌てて両手を振りつつ中腰になって逃げようとしていたセイバーが、真顔になって座った。

そう、落ち着いた時にはセイバーは居ないだろう。
ひょっとしたら、私が居ないかも知れない。

「・・そうですね、その時はお願いします。」
セイバーが透き通る様な微笑みを浮かべて答えてきた。
しばらく、静かな、優しくも哀しい時間が流れる。

「さて、こうしてても仕方が無いわ、作戦会議よ、セイバー」
気分を変えて明るく言った。こんな辛気臭いのは性に合わない。天下の遠坂凛が感傷に浸ってどうする。
「そうですね。ところで、アーチャーはどうしたのです?」
セイバーがきょろきょろと辺りを見回している。
「恒例の散歩だそうよ。」
「この時間に・・ですか。雪も降ってましたけど。」
「そうなの?ここに居たら分からなかったわ。まあ、でもそんなに遠くには行かないでしょう。」
「そうです・・か?」

なんとなくセイバーに同意したかった。なーんかとんでもないことしてそうな気がする。
・・・まあいいか。

「ところで、今一番気になってるのは、あの不気味な黒い影なんだけど。セイバーは何か感じた?」
その一声でセイバーが真顔になる。
「アレですか。言い難いのですが、私には近くて遠いモノの様に感じました。」
「なにそれ?」
ちょっとぽかーんとした顔をしてたと思う。セイバーはお構いなしに言葉を続ける。

「私達サーヴァントに近い存在のような、限りなく遠い存在のような、ちょっと言葉では言い表せませんが
そんな感じを受けました。表と裏、光と影のような。」
「ということは、あれもサーヴァント? なの?」
「いえ、サーヴァントではないとは思うのですが、確証はありません・・・
凛のほうがこういったことには造詣が深いと思っていたのですが。」

正直言って召喚系とか魔物系はまだまだ知識が浅かったりする。
なんとなく陰気な感じがしてあまり手を出していなかった領域だった。
「うーん、得意分野じゃないからねぇ。まあ、でもアーチャーが避けたほうが良いと言ってたから、避けておいたほうが無難ね。」
「信頼しているんですね、アーチャーを。」
「そりゃ、そうよ。私が呼び出したサーヴァントだもの。」
何か考えているようなセイバーの表情が気になった。
「どうしたの? セイバー」
「・・・凛はアーチャーでないアーチャーを見たことはありますか?」
セイバーの禅問答のような質問がよく分からなかった。
「は? アーチャーでないアーチャーって何?」
首をかしげながら聞いてみたが
「私にとってはあの影よりもアーチャーの方に違和感があります。」
両手で持った湯のみを、凝視しながら呟くセイバーに絶句した。

「・・・どういうこと?」
しばらくの沈黙の後、ようやく声に出すことができた。

「うまく言えませんが、彼はこの世界の住人や人間では無いような気がするのです。無論、英霊でもない。言葉は悪いですが
一番近い例えで言うと悪魔とか魔物。そんなものに近いような気がします。
・・・ただ、私はアーチャーは信頼できる人物と思っていますし。少なくとも敵ではないことに正直ほっとしています。」
「あ、そーいうこと? だったらおかしくないわ。セイバー。」
セイバーの懸念はなんとなく分かった。さすがに英霊ともなると異なる世界の住人ということも敏感に察知するのだろう。
「あんまり、深刻そうな雰囲気だから、心配しちゃったじゃない。」
「えっ? 凛?」
顔を上げたセイバーに笑って答える。もう、隠さなくても良いわよね。
「アーチャーはね、平行世界の住人よ。この世界の英霊っていう存在じゃないもの。魔物は言い過ぎと思うけど、違和感があって当然よ。」

「平行世界・・・ですか?」
あっけに取られたような顔をみて、ちょっと優越感に浸ってしまった。
「そうよ、ついでに言うと実体を持って生きてる存在よ。」
「な、どうして、そんな存在をサーヴァントに・・・凛、あなたは一体何者ですか?」
「間違えて召喚しちゃった。てへ」
「凛! 『てへっ』じゃないです。間違えて召喚したって・・・そんなものなのですか?」
セイバーの詰問口調が徐々に不安げな口調に変わっていく。

「さぁ、私は聖杯戦争って初めてだから、よく分からないけど、そういうもんじゃないの?
さ、もうアーチャーの話は終わりにしましょ。それよりこれからの作戦よ。作戦。」
それだけではないのですが。と、なにやら呟いているセイバーを横目に見ながら、お湯を沸かしに席を立った。
なんで、セイバーはあんなにアーチャーを気にしてるんだろう。
まあ、確かに見た目は絶品だけど。


Chapter 17 Side-B 眩惑・ライダー


新都の高層ビルの屋上に紫の髪をした美女が立っていた。言うまでも無くライダーその人だった。
風に長い髪が揺らされ、まるで紫の蛇がまとわりついているようにも見える。

「まだまだ甘いですね、セイバー。」
遠見の力は無いので、公園が今どうなっているか分からない。
ただ、何より嬉しいことは、慎二に移されていた令呪の縛りが消えたことだった。その点は素直にセイバー達に感謝しよう。
これで、本当のマスターの為に働くことができる。
とりあえず、従順に従っている振りをするためにシンジを庇う様な戦いをしたが、一刻も早くマスターの元に戻りたかった・・・・

「サクラ・・・あなたは私が守ります。」
呟きは風に流れる。
とはいえ、不可解なことも多い。サクラの祖父である魔術師の存在、異質な魔術師。あの強力な魔術師の隙を突くのは
なかなか困難だろう。
もうしばらく従順な振りをしておかなければならない。が、サクラの現状を見ていると、いてもたっても居られない。

しかし、今はそんなことよりも
「立ち聞きは関心しませんよ。」
振り返りもせずに言った。
「気づいてたのか? まあ、気づくわな、フツー」
詰まらなさそうな若い男の声がする。

ゆっくり振り返る。
「当然ですよ。ランサー。」
そこには腕を組んでたっている青い獣じみた戦士が居た。
「ほう、この間とは段違いだな。今が本当のお前か?」
ランサーとは一時ニアミスをしたことがある。その時は逃げの一手だったが、その時のことを指して比べているのだろう。
「どうでもいいことですね。ところでランサー、今からですか? 容赦はしませんよ。」
意識が自然と戦闘モードに切り替わっていく。
「おーこわ。今はマスターにやれって言われてねーからよ。」
迸る殺気を、柳に風と受け流したランサーは本当にやる気が無いようだった。
「そうですか。では今戦う必要は無いですね。」
こちらも構えを解いた。
「なーんかよー、やる気がでねーんだよな。聖杯戦争の真っ只中にいるってのによー」
「あなたの愚痴を聞くために、ここに居るわけではありません。」
「はっ、ちげぇねぇ。」

「それと、あなたは聖杯戦争なんていう茶番をいまだに信じているのですか? お目出度いですね。」


Chapter 17 Side-C 眩惑・ランサー


そういってライダーは消え去った。
「おい、ちょっと待てよ」
すでに誰も居ない中空にむなしく響く。
「ちっ、せっかちな奴だぜ。しかし、どーゆーこった? 聖杯戦争が茶番だと?」
ビルの外壁に胡坐をかいて座った。

「あ~っ、気にいらねぇぜ、くそっ。まともに戦えやしねえじゃねえか。」
頭をぼりぼりとかいて空を見上げた。
「せっかく強い奴と戦えると思ったのによ。つーか、強ええ奴がわんさか居るのによ。けっ」
白いものが曇天からちらりほらりと降ってきた。
「雪か。さて、そろそろ、俺も帰るとすっか。」
立ち上がり、帰りかけたその時、異質な気配を感じた。
ちょうどビルの下。
「なんだ?」
悲鳴が聞こえる。

人間が二人、黒い影に飲み込まれていくところだった。
「なんだ、ありゃぁ?」
その影に意識を向けるとぞっとした。
「なんだってんだ、一体。・・・しかし、あいつはちーとばかりヤバイな。背筋がちりちりするぜ。」
人間を飲み込んだ影は、そのままゆらゆらと移動していく。
しっかりとその動きを見送ってからランサーも姿を消した。

誰も居なくなった屋上に雪が降っている。

そして地上には主の居なくなった自転車が2台、転がっていた。


Chapter 17 Side-D 眩惑


ちらほらと舞い散る雪の中を黒い天使が歩いていく
時折立ち止まり、辺りを見渡して何やら考え込むと、再びまた歩き出す。
闇が恥らうような姿に雪がまとわりついていく

「やっぱり、ここか。」
そういって立ち止まった闇の結晶の前には長い石階段の参道が伸びている。
ためらうことも無くせつらは上り始めた。

山門が見えてきた時、同時に大太刀を背負った若い侍が現れた。
立ち止まって上を見上げるせつらに歌を詠むような口調で声がかかる。
「これはこれは、見目麗しい殿御が参られたな。まるで、闇から出でた化生かと思うほどに。先の大輪の花に劣らず美しい。」
「どーも」
のんびりとした答えはいつものせつらであった。
「何ゆえ此処に参られた?」
「ちょっと聞きたいことがあって。誰でもいいんだけど、お寺の人が良いな。」
「サーヴァントは中に入れるなと命令されていてな、お主を通すわけにはいかないのだがな。」
「よく、サーヴァントと分かったね。」
「この刀が、背筋が、全身が語っておるよ。恐怖と歓喜に打ち震えておる。」
「ありゃ、どうしても通してもらえない?」
「無理だな」
「そう。じゃあ、実力行使で通らせてもらおうかな。」
そういって、なにごとも無かったかのように歩を進める。

「致し方ない。」
次の瞬間、小次郎が太刀を抜き放ち、目に求まらぬ速度の斬撃を頭上に放つ。火花が飛ぶ。
そのまま振り下ろす刀で右の空間を凪ぐ。火花が飛ぶ。
手首を返し左の空間を削ぐ。火花が飛ぶ。

「ありゃ、やっぱり見える?」
のほほんとせつらが言う。

対する小次郎の目は閉じていた。
「なんとか・・な。それにしても恐ろしい技よ。目に見えぬ鋼線・・・というところか。」
「ご名答、さすがに巌流だけあるね。」
「まあ、見えない業物との凌ぎ合いに慣れておるだけではあるがな。
しかし、私をしっておったのか、それは恐悦至極。」
「有名だからね。」
茶飲み友達のような穏やかな口調で会話が続く。
「戻る訳にはいかないのかな。」
「だったらお寺の人をここに呼んで貰えるかな?」
「さて、一存では決められんな。」
「そう。残念だ。」
「たしかに、残念だな。どうしてもかな?」
「うん。」
「いたし方あるまい。」

小次郎は深呼吸をし
「それでは、本気を出させて貰おう。佐々木小次郎、参る。」
そういって、せつらの方に舞い降りながら刀を振るう。
長大な刀が軽やかに踊る。一つ一つの舞はすべてが致命傷となってせつらに降り注ぐ。
せつらの周りで滝の様に火花がはじけ飛ぶ。
次の瞬間、小次郎が中空に向け太刀を振るう。火花が飛ぶ。一歩後ろに引いた小次郎が更に刀をなぎ払う。

「厄介な技だな。その細い鋼線すら私は断てぬのか。・・・いや、断って見せよう。」
若干腰を落とし、太刀を腰だめの構えに取る。
対するせつらは無手自然体、ただ突っ立っているだけに見える。
小次郎が眼を閉じる。雪の中額に汗がにじむ。
次の瞬間、小次郎の手が霞む。
「ぬ」
鞘代わりに添えた左手の手甲を鞘走りに、腰だめにした太刀が右上に斬り上がる。

ぴいんと音がした。
「お見事」

同時にせつらが後ろに舞う。黒いコートがはためき、その残像を2つの銀光が薙ぐ。
10段ほど下にせつらが舞い降りる
小次郎の額から汗が滴り落ちる。

「純粋な剣技のみで”僕”の糸を断つとは、見事。さて、では次はどうかな?」
せつらが声をかける。
「ぬ。」
小次郎は相対している者が変わるのを感じた。全身の神経が、武術者としての研ぎ澄まされた精神が警告を発する。
「お主・・・」

せつらが足を踏み出そうとした時

山門から落ち着いた男の声がかかる。
「その立会い。そこまでにして欲しい。」
そこにメガネをかけた痩躯の男が立っていた。
「私は寺で厄介になっている葛木と言う者だが、私では話にならないか?」

せつらが眼を向ける。

「宗一郎殿、貴殿が出てきてはならぬ。何のために私がここで門番をしていると思っているのだ。」
小次郎が庇うように立ちふさがる。
「今、アサシンを失うわけには行かないのでな。聞けば話をしたいだけ、ということのようでもあるしな。」
「しかし」
小次郎が言い募るところを手で制し。
「改めて問うが、私では不足かな?」
鋼のような声でせつらに問いかける。
「いや、十分ですよ。」
のんびりとせつらは答える、

「では何が聞きたいのか教えて欲しい。」
「ここしばらく、このお寺で変なことはありましたか?」
せつらが尋ねる。
「・・・抽象的かつ主観的な質問だが、変といえば変だが、そうでないといえばそうでない。」
「たとえば?」
「そうだな、冬にしては虫が多い」
「なるほど。では体の不調を訴える人とか、夢見が悪い人は?」
「む。特に代わって様子は見受けられないが・・・」
葛木は考え込みながら答える。
「そう、じゃあ、最後の質問。キャスターさんは無事?」
「・・・あまり無事ではないな。」
「宗一郎殿!」
小次郎が声をかける。
「いや、かまわん、隠す必要も無いだろう。」
「しかし・・・」
「分かりました。ありがとう。だいたい分かりました。」
せつらが踵を返して階段を下りる。
「変だといえば。」
葛木の言葉にせつらが立ち止まる。
「微かだが、地震があったな。」
せつらは再び歩き出す。

いつのまにか雪もやんでいた。
参道を降りたあと、再び山門の方を見上げた。
もう小次郎の姿も無くひっそりとしていた。

「邪魔。」
せつらがそう言った後、軽いものが落ちる音が響いた。

「もう、間に合わない・・か。」
そう呟いて、黒い天使は闇に消えていく。
強い風が吹いて、木々の葉鳴りが何かの悲鳴の様に聞こえる。そして、静かになった。