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夜の森は穏やかな闇と静謐な空気、そこに住む者達の息吹で満ち溢れている。

――普通は。

しかし、この森は違う。
穏やかな闇の代わりに、切り裂く閃光、静謐の代わりに轟音。
そして生命の息吹の代わりに死の影が覆っていた。


そこは、一つの戦場だった。


――二人の英雄の戦場。


無数の剣が、槍が、斧が飛来する。それら死の使いを岩の剣が迎え撃つ。
すさまじい衝撃と耳をつんざくような音が鳴り響き、飛来した武具が弾き飛ばされる。
弾き飛ばされた武具は大木をなぎ倒し、大地を穿つ。
巨大なブルドーザーが無理やり森林を切り開いていくように、岩剣を持つ黒い巨人を中心に半円上に森が開けていく。

黒い巨人は一歩も動かず、飽くなき攻撃をただはじき返す。
心の奥底にわずかに眠る魂が、少女を守ると誓った。

――その少女が彼の背にある。

少女は金縛りにあったように硬直し、逃げることもできないでいる。
動けない少女を守るために、黒い巨人はその場に立ちふさがり剣を振るう。

天上に浮かぶ銀輪に照らされた森の中で、少女の令呪で強化された肉体を唯一の盾となし、
迫りくる死から少女を守る。
崇高な、しかし、絶望的な戦い。

対する黄金のサーヴァントはその姿をじっと見ていた。


Chapter 20 Side-A 悲愁


耳をつんざく音が落ち着いて、ギルガメッシュが腕を組みながら言葉を紡ぐ。
「同じ半神ゆえにしばらくの猶予を与えては見たが、所詮バーサーカーはバーサーカーか、つまらぬな。」

イリヤの金縛りが解け、岩のような巨人の横から顔を出し反動的にまくしたてる。
「私の、バーサーカーは絶対お前なんかに負けないんだから。」
「ほう、では我が負けるというのか。面白い。」
「お前なんか、いなくなっちゃえー!」
「■■■■■----!!!」
くっくっくと笑うギルガメッシュに対し、恐怖を振り払うかの様な少女の叫び声。
その叫びを引き金にして、バーサーカーが襲い掛かる。一瞬にして詰め寄り咆哮をあげつつ岩剣を振り下ろす。
もし、一連の動きを普通の人間が見ていたら、巨人が瞬間移動したように思うだろう。

……しかし、岩剣がギルガメッシュを砕く音も、大地を穿つ轟音もなかった。
「バーサーカーッ!!」
バーサーカーの腕はその周囲の空間から滲むように出てきた鎖に捕縛されていた。

「とはいえ、いい加減飽きたな。動けぬものを嬲り殺しにする趣味はないが、余興だな。」
その言葉を発した次の瞬間、バーサーカーに鎖がじゃらじゃらと更に巻きつく。

バーサーカーが鎖を外すべく必死にもがくが鎖は外れない。
「何よ、それ!」
「天の鎖(エルキドゥ)と言ってな、我がとある牡牛を捕まえる際に使った鎖だが、神の血を引く者にはよく効くのでな。はははは。」
鎖はぎりぎりとバーサーカーの体を締め上げ、ねじ切ろうとするがバーサーカーは雄叫びをあげつつも、それに抵抗する。
「ちっ、まだ抵抗できるとはな。」
ギルガメッシュが吐き捨てた。

「バーサーカー!! 戻りなさい!!」
鎖の音を断ち切るかの様な固いイリヤの声が響く。霊体化させバーサーカーを逃がそうとする。が、鎖に締め上げられている巨人は微動だにしない。

「……うそ、なんでよ、なんで私に逆らうのよ。なんで戻ってこないのよ。」
「考えが甘いな、人形。この鎖に繋がれたものは、たとえ神であろうとも逃れることはできん。というより神性が高いほど逃れられん。もともと神を捕縛するために作られたものだからな。」
「ぁ……」
目を見開き喘ぐようなイリヤにギルガメッシュが死を宣告する。
「さて、そろそろ死ね。バーサーカーも仲良く送ってやる。もっともお前は聖杯になるだけだがな。」
「ぃゃ……」
ギルガメッシュの後ろの空間に現れた無数の武器を見て、イリヤはいやいやをするように後ずさる。


「あのー、聖杯ってなんですか?」

黄金の小手に包まれた手をあげ、イリヤに向かって振り下ろそうとした瞬間、のんびりとした声が上空からかけられる。
30mほど離れた何もない上空に黒い影があった。
ちょうど森の木の上端くらいの高さに、月を背景に黒いコートが翻る。見えない足場があるかの様に空中に立っていた。それは幻想的な一枚の絵。

「ぬ。」
ギルガメッシュはイリヤに振り下ろそうとした手を黒い影に向かって振る。ギルガメッシュの背後から影に向かって無数の武器が突き進む。
飛んできた武器が当たる瞬前、黒いコートを翻し――そのままの体勢で落下した。

ギルガメッシュが放った武器は虚しく何もない空間を切り裂く。
「道化かっ!」「アーチャー!?」
異なる声が同じタイミングで異なる言葉を響かせる。片方は苛立ちの声、片方はなんで此処にいるのか?といった訝しさの声。

「こんばんわ。お取り込み中すいませんが、イリヤスフィールさんが聖杯になるって、どういうことですか?」
気の弱い人間であれば、そこにいるだけでショック死する殺伐とした空気の中、今日の定食のメニューを聞くような、あまりにもかけ離れた、のんびりとした口調で大地に降り立ったアーチャーが尋ねる。
しかし、それは同時にギルガメッシュの神経を逆なでする行為でもあった。

「道化は道化らしく控えておれっ!」
激高したギルガメッシュの叫びに合わせ、アーチャーがいたところに一本の剣が突き刺さる。刀身にびっしりとルーンが刻まれた剣だった。
「そもそも聖…」
一歩後退して回避していたアーチャーが、言葉を打ち切って腕を横に振る。ぴうんと音が鳴り足もとからの一撃を横にそらす。続けざまに放たれる斬撃が盛大な火花と共にアーチャーの周りを覆う。
足もとに刺さっていた剣が、勝手に空中に浮かびアーチャーに攻撃を加えていく。

「同じ間違いを二度繰り返したくはないのでな、道化用に特別に見立ててやった剣だ。喜ぶがいい。」
剣の攻撃を交わし、あるいは受け流しているアーチャーを見てギルガメッシュが哄笑する。
「危ないよ。」
剣戟を交わして後ろに飛びずさったアーチャーが声をあげる。剣が追いすがってさらなる攻撃を加える。
一瞬たりとも止まったら即座に串刺しにされる、そんな激しい斬戟を交わしながら、茫洋とした口調は変わらず。

「それは、持ち主が敵と判断したものに対して自動的に攻撃を加える剣だ、別に使いこなさなくても使えるのでな。しばらくそれと戯れておれ。」
ギルガメッシュはそう言ってイリヤに向き直った。
鎖でがんじがらめになってもがいているバーサーカーの横を過ぎ、イリヤの前にゆっくりと立ちはだかる。

「やだ、やだ、やだ、やだ、やだ」
イリヤは赤い目に射竦められ硬直して、喘ぐように声を出すしかできない。
その前で無造作に横に振ったギルガメッシュの右手には細身の長剣が握られていた。
声にならない悲鳴が上がり、一瞬遅れて血がしぶいた。

「■■■■■----!!!」
バーサーカーの咆哮が森を震わせ、ビギンッと鎖を引き千切った、そのままの勢いで岩剣をギルガメッシュに投げつける。
「ぬ。」
不意打ちであった為にかわすことができず、ギルガメッシュはまともに長剣で受けた。
が、令呪で強化されたバーサーカーが投擲した岩剣は受け流すことも、押しとどめることもできなかった。
恐ろしい程の念が籠った岩剣は受けた長剣ごとギルガメッシュの右肩を砕いた。
「ぐぁっ!!」
苦鳴をあげ、距離をとるギルガメッシュ。

致命傷にならなかったのは無名とはいえ、装着していた鎧の防御力のおかげだった。

許さん。とつぶやきながら怒りのオーラをまとったギルガメッシュは、使い物にならなくなった右腕ではなく、左手に円筒形の石柱の様な異様な剣を取り出した。
怒りに呼応するかのごとく、周りの風を巻き込みながら回転をあげていく異様な円柱の剣。
大気が震え魔力が収束していく。
岩剣を投げつけ無手になったバーサーカーはそのまま掴みかかる。しかし、完全に天の鎖がほどけているわけではなく本来の敏捷性が出ない。

……一歩、遅かった。あと一歩。イリヤが無事で令呪で強化できていたなら……

「跡形もなく消え失せろっ!
天地乖離す開闢の星(エヌマエリシュ)ーーー!!」
その昔、天と地を切り裂いたと言われる宝具、ギルガメッシュの持つ本当の宝具である乖離剣エア。その一撃は眩い光を放ち空間を歪ませ切り裂く。
真名開放と同時に放たれた眩い一撃は掴みかかろうとしたバーサーカーを飲み込む。
全身全霊を持って耐えきろうとするバーサーカーの想いを打ち砕き、突き進み、森に巨大な爪痕を残した。
しばらくして光が収まった後は、両肩で息をする黄金のサーヴァントと高速道路のトンネルのようにすっぽりと抉れた森があるだけだった。

「腐っても最大級の英霊か、天の鎖を引き千切るとは……」
両肩で荒い息をつき、そう呟いた。その声には同じ半神としての想いが籠っていた。

ふと、思い出して目をやった黄金のサーヴァントは、そこにいるべき白い少女が忽然と消えているのに気がついた。
出し抜かれた怒りよりも、出し抜いた事実に対する称賛が笑いの形となった。
「道化め、我を謀かるか、ははははははっ。」


ひとしきり笑った後、その赤い瞳に凄絶な光を乗せて黄金のサーヴァントはその場を後にした。


……森に静けさが戻った。一人の偉大な英霊の消滅と引き換えに……



Chapter 20 Side-B 悲愁


新都の夜は賑やかだ。
いや、賑やかだった。
最近の連続失踪事件や通り魔事件等で繁華街は軒並み閑古鳥が鳴いている。
夜になったら早々とシャッターを閉める店が増えている。それが更に雰囲気を暗くしていた。

遅くなった人も足早に家路につき、警官の姿の方がやけに多く見える。

そんな夜の街を神父が歩いている。
見上げるほどの上背があるが、ひょろっとした印象もなく鍛え抜かれた肉体を持っているのが想像される。
まるで巨大な豹の様な、しなやかな動きだった。
その足は巧妙に警官を避け、暗闇を利用し、人目につかない様に深山町の方に向かっていた。

その足がぴたりと止まり、方向を変えた。向かった先は冬木中央公園。
中央公園の中に入り、更に奥にある中央広場に入って、ようやく神父は立ち止まった。
「さて、こんなところに呼び出して何の用だ? いまさら隠れる必要もあるまい。」
誰もいない公園に向けて問いかける。
静寂が支配する公園で生を主張するのは言峰綺礼ただ一人。

「さすがじゃな。一時とはいえ代行者の一翼を担った者だけはある。ひさしぶりよの。」
いや、もう一人いた。
中央広場に隣接する林、ちょうど言峰の横の方の闇から、男の影が現れた。

「とうとうお出ましか、マキリ臓……硯……?」
振り返ってその影を目にした言峰は訝しく目を細める。
「その通り、よくわかったの。まあ我はお主の記憶する臓硯と見目は異なるかもしれんがの。」
そう言って現れた姿はどう見ても壮年の終盤、50前後と言うところか。
痩せぎすの体を、長袴と十徳羽織に身を包んだ姿は、間桐の特徴でもある青みがかった髪を無造作に撫でつけていた。
圧倒的な存在感とオーラを背に、鋭い眼光が言峰を貫く。
代行者としての直感が告げる。コレは違う、と。
血をすする妖怪と聞いていたが、それとも異なる。
「死に体と聞いていたが……噂はあてにならんようだな。」

臓硯から発せられる異様な気は、今までの代行者の経験からも異質なものを感じていた。
月の方を見ながら臓硯が続ける。
「我もこの姿まで戻ったのは何十年、いや何百年振りかの。とんと記憶が定かではないわ。」
「ほう、若返った……と。長年、生に固執しているモノは魂が朽ちて腐って行くばかりと思っていたがな。」
「同じことの繰り返しであれば魂も磨滅し腐っていくものじゃ。肉体は魂に引きずられ、摩耗すると同時に老いてくる……それが自然の摂理じゃな。しかし、我は蘇ったのじゃよ。」
「魂が蘇るような刺激でもあったか。」
そう言いつつ言峰は背筋に冷たい物を感じていた。無意識に武装を確認する。主要武装たる黒鍵は左右に5本づつ。魔術刻印もあるにはあるが、攻撃のオプションとしては使えない。

「そうじゃな、一つの根源と言ってもよかろうか、偶然だが我は見つけたぞ。綺礼よ、素晴らしい物を。魂を揺さぶる異なる理を。新たなる理を。聖杯と共に新たなる理を手にできるかと思うと、摩耗しながらも生に固執してきた甲斐があったというものじゃ。我の悲願も達成まであとわずかじゃ。呵呵呵呵呵。」
「御老体は饒舌だな。よほど茶飲み友達が欲しかったと見える。」
挑発的な物言いに臓硯は笑いを納め、視線を月から言峰に移す。
「さて、ようやく来たようじゃな、とにかくアレは遅くていかん。所で、綺礼よ……」
言葉の途中で肉に包丁を叩きつけたような音が鳴り、言峰の黒鍵が臓硯に突き刺さる。心臓を狙ったが臓硯は腕で防いでいた。
「年寄りはもっと大事に扱うものじゃ。かなり痛かったぞ。……ホレ、返すぞ。」
臓硯は二の腕に刺さった黒鍵を、無造作に腕の肉ごとひっこ抜き投げ返した。

「まずいぜ、言峰。さっさとずらかるぜ。」
投げ返された黒鍵を、ゲイボルグで叩き落としながらランサーが言峰の前に現れる。霊体化して傍にいたらしい。
ランサーが中空にゲイボルグでEOLH(盾)とEHWAZ(動)のルーンを描き、防御と加速を促す。

背中に異様な気配を感じ、言峰は力いっぱい横に飛んだ。ルーンの加護の為か通常の倍ほどの速度で離脱する。
さっきまで言峰がいた空間を、夜でもはっきりと分かる黒い影が突き抜けた。
「アレは……。間桐…桜か…」
公園の入口に立つ影を見てつぶやく。
そこには黒いローブのようなものを纏った桜がいた。その視線はうつろであり、夢遊病者の様にゆらゆらと突っ立っていた。
黒い影は、桜の足もとから伸びていた。
「アレだ、言峰。俺が見たヤバい奴だ。」
ランサーが木の上から声をかける。
「かっかっか、さすがに代行者じゃな、一筋縄ではいかんな。」
臓硯も位置を変えながら声をかける。

代行者として修羅場をくぐった経験が、体制を立て直すべきと猛烈に意見していた。
「ランサー、一旦引くぞ。」
「ほいよ。」
そう言って公園の林に飛び込む。後ろを警戒しながらジグザグに駆け抜ける。
聖杯の確保をギルガメッシュに任せ、戦力を分断したのが誤算だった。
マキリ臓硯という人物を甘く見ていた。

臓硯は特に追撃するでもなく言峰達が立ち去るのを傍観していた。

「おっと。Mein Hand rauben das Macht(我が手は力を奪う)」
突然、臓硯の方に伸びてきた黒い影に強奪の魔術をぶつけ、影の動きをひるませた隙に公園の端まで離脱する。

桜はゆらゆらと揺れながら臓硯がいた場所に向け歩き出す。


「さすがに制御はできんか。このままだと我も巻き込まれるな。」
そう言って臓硯も暗がりに消えて行った。

雲が月を覆い、辺りは暗くなった。
誰もいなくなった公園でゆらゆらと行き場もなく桜だけが立っていた。


Chapter 20 Side-C 悲愁・凛


……リン。

…りん。

…凛。

何よ、うるさいわね。
意識が深い眠りから覚醒してくる。ちょうど深海から海面に浮上してくるような感覚……

「凛、起きてください。3時間経ちましたよ。」
誰かがゆさゆさと私の体を揺さぶる。

う~、まだ寝たりないのよ。

「凛、起きてください。」
涼やかな声に合わせ、再び体が揺さぶられる。

「う~もう少し~」
そう言って布団をさらに巻き込む。
このぬくぬくの感触が気持ち良くて……

「凛、最終手段に出ますがよろしいですか?」
幾分硬くなった声が聞こえる。

最終手段って何よ?
できるもんだったらやってみなさいよ……

と思った瞬間、布団が思いっきりはがされた。
「きゃー、さむい~~~っ」
はっきり覚醒した。

気が付くと布団を抱え憮然としたセイバーと眼があった。
きょろきょろとあたりを見渡す。ここは……
そっか衛宮邸の私の部屋か。
ん、え~っと~??

セイバーが堪りかねたように、はーっとため息を吐いた。
「凛、あなたが言ったのですよ。3時間で起こせと。」
「……あ、そっか、そうだったわね。ごめんねセイバー。ちょっと疲れてたみたい。」
「疲れているのは……そうでしょうね。」
ちょっとセイバーの表情が柔らぐ。
「あ~、まぁ、でも起きないとね。あ、そうそうアーチャーは帰ってきた?」

頭をポリポリと掻きながら聞いたが帰ってきた答えは
「いえ、まだ帰ってきていません。凛、大丈夫でしょうか? イリヤスフィールを送って行ってかなり経っていますが…」
だった。

思わず令呪を見る。ある。レイラインを繋いでみる、繋げない。
「駄目、念話はできないわ、かなり遠くに行っているのかしら?」

「倒されたと言うことは…?」
「それはないわ、令呪が残ってるもの。というより、アーチャーがそう簡単に負けるわけないわ。」
「確かに。」
「まあ、そのうち帰ってくると思うわ。…ところでご飯ってある?」
「ええ、シロウが今温めてます。」
「じゃあ、居間に行きましょうか。」
心配そうなセイバーを宥めて部屋を出た。
何やってるのよ、アーチャー、ちょっと心配するじゃない。
そう、心に思いながら。


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居間で士郎が作ったおでんを、セイバーと二人で食べて一息ついた。

時計の針は11時を過ぎようとしていた。
今は3人で座ってちゃぶ台を囲んでお茶を飲んでいる。
セイバーの前にはみかんの皮が……

「そう言えば、セイバーは私が食べるまで待っててくれたの? それにしては比較的小食だったように思うけど?」
ふとした疑問を口に出す。
ご飯も2杯しか食べなかったし…

「えっ、あっ、いや、あのっ」
なんだろう、セイバーが赤くなってる。
「ぷっ」
士郎が噴き出した。ん? ん?
「何よ、私だけ除け者なわけ?」
「遠坂、怖い顔をしないでくれ、セイバーは夜食だ。」
士郎が笑いながらそう言った。
あ、なーるほど、晩御飯の後の夜食なのね。
あ~、セイバーが真っ赤になって下向いてる。
なんだかんだ言って、この二人って相性いいわよね~、私とアーチャーは…と埒もないことを考える。
「どうした? 遠坂、お前も顔が赤いぞ? 大丈夫か?」
うっ、どうも考えていたことが顔に出たようだ。
「なっ、なんでもないわよっ。それよりこれからの作戦を考えましょっ。」

あわててそう言うと、セイバーも士郎も笑いを抑えて真剣な表情になる。
そう。今の状況を考えると、笑ってはいられない。
特に士郎は、表には出さないが、ふとした時に見せる表情が如実に精神状態を物語っていた。
桜のことが心配なんだろう。それを押し殺して表面上は明るくふるまっている。見ていて痛々しくなる時がある。

「凛には何か考えがあるのですか?」

一人、思いにふけっていると、セイバーが声をかけてきた。
はっと気が付いてセイバーを見た。士郎も真剣な目を向けて来ていた。

「……そうねぇ。」
妙案が思い浮かばない、アーチャーが帰ってきていれば何か進展がある様な気もしたんだけど……。


それに気がついたのはセイバーと同じタイミングだった。
セイバーは瞬時に鎧を纏って立ち上がり、私は魔術回路に魔力を通す。

……しまった宝石は自分の部屋だ。取りに戻る時間はない。

「どうした? セイバー、敵か?」
士郎も身構える。気配は分かっていないだろうけど、対応は分かってきたようだ。
死線を潜り抜けて一応は成長してるのね。と頭の片隅で感慨にふける。

「しっ、外にサーヴァントが一体。ゆっくりとこっちに近づいています。」
「マスターはいないようね。変ね。向こうもこっちのことが分かっていると思うけど…」
「様子をうかがっているのではないでしょうか?」
セイバーが囁く。
いずれにせよ、襲撃には間違いない、サーヴァントの方はセイバーに任せ、周りに探索の魔力を飛ばす。

『ぴんぽ~ん』
呼び鈴がなった。

3人ともびくっと反応した。
「「「…え?」」」

『ぴんぽ~ん』
再び呼び鈴が鳴らされる。
「これって…」
「そうとしか考えられません。」
「なんだよ?」
顔を見合わせる。


『ぴんぽ~ん』

「押してるのは、ひょっとして……」
「外の気配の主だと思います。」
「へ?」

『ぴんぽ~ん』
「夜分遅くに大変申し訳ござらん。誠に相済まぬが、こちらに黒衣のサーヴァント殿とセイバー殿はおられるか?」
門の外から涼やかな声がかけられる。

「「「はぁぁ?」」」
三人の呆けた声がかぶった。