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2月2日
朝、起きてシャワーを浴びた。
もともと私は朝が弱い、致命的に弱い。ついでに・・・・そうか昨日はアーチャーとデート、じゃなくて偵察にいってたんだっけ。
しかし、夢見が悪かった。あれは本当の出来事だろうか。頭を振って嫌な思考を振り払った。濡れた髪が絡まってうっとおしい。
身だしなみを整えて居間にいったら、昨日と同じような状態だった。アーチャーがソファで新聞を読んでいて、お茶を飲んでる。
あれは昨日、どうしてもというから買ったお茶だ。煎茶のティーバッグだけど。煎餅も買ったけど食べながらぶつぶつ言わないで。

「おはよ」声をかけた。
ちらっと視線をこちらに向けて「おはよう、今日は学校?」やっぱり茫洋とした雰囲気は変わらない。
普通、こう言う時サーヴァントだったら、こう言うと思うんだけど。「なに、学校に行くだと?マスターになったからには、常に
敵マスターを警戒しなくてはならない。学校という場は、不意の襲撃に備えにくい場所だろう」と。

でもここの黒衣の麗人は「いってらっしゃい。」って。
この規格外の危機感0のサーヴァントの言動に頭痛がしてきた。「あのねぇ、こう言うとき。敵マスターがどーとかなんとか
言わないの?」こめかみを手で揉みながら聞いてみた。
返ってきた回答は「いたら逃げておいで」だって。
たしかに、今は回路が閉じた家系しか残っていないから、冬木の魔術師は私だけなんだけどさ。
心配ぐらいしろ。このトーヘンボク。


Chapter 3 遭遇・凛



昨日、確認したんだけど、アーチャーは英霊じゃないので霊体化できない。つまり、普通の人間と変わらないということだ。
レイラインを通じた念話が、かろうじてできるくらいだ。令呪を使ったらどうなるのだろう。ちょっと不安。

「・・・で、貴方は何をしてるの?」ソファから立ち上がりコートに手をかけようとしているアーチャーに声をかけた。
「散歩」のんびりとした回答が帰ってきた。もう問いただす気力も無くなった。
一緒に家を出た。

てくてく・・・・

住宅街を抜け、十字路を過ぎ・・・

「で、アーチャー?どこまで散歩なの?」こめかみと口を引きつらせながら聞いた。一応外だし、人目もあるので、怒鳴り散らす
わけにはいかない。
「学校まで」のほほんと言いやがりましたよ、この弓なしアーチャー。

実は、さっきから視線が痛い。ぼちぼちと学校が近付き登校する生徒が見受けられる。私は学校では一応有名人。その有名人が朝、
若い男性と一緒に登校なんて、もう噂は学校中に広がるだろう。あ、頭痛のタネがまた増えた。
・・・聖杯戦争って殺し合いじゃなかったっけ?

噂・・・・ま、まずい。なにか言い訳を考えておかないと。えーとえーと。
「アーチャー」アーチャーをビシッと指さして、「あなたは今から私の従兄弟ね。」「は?」
「久しぶりに遠坂の墓参りに来てるだけだからね。」「はは、わかった。」
いまいち信用ならないんだけど。コイツは頭は悪くない、はず・・・、そう思いたい・・・・。

学校が近付くにつれ、危険水位が高くなってきた。主に女子。やばい、これはやばい。これ以上はまずい。
そこで、アーチャーのほうに体を向けて・・・、当然、学生鞄は両手で持って体の前だ。
「それでは、お兄様。ここまでで結構ですから。」回りに聞こえるように、アリバイを作る。ちょっとわざとらしい?
「じゃぁ、気をつけてね。」アーチャーはちょっと微笑んで踵を返した。意外とアーチャーって機転が利くのね。
危険水位だったものが一気に収まった。ふう、助かった。


アーチャーが去っていったら、誰が私に声をかけるのか牽制し始めていた。そのすきに校門に入った。
ふう、これでなんとか・・・

ズクン、ズクン・・・
「えっ?」

瞬間、一気に気分が悪くなった。
空気が淀んでいる。結界?にしては大規模。
一昨日はなかった。ということは昨日の一日、それも私がいない時に張ったな、ちっ。調べないと。
・・・多分、怖い顔をしていたんだろう。私の回りから、人が減った。

ふとアーチャーの声がした。”裏の林にいる。放課後になったら屋上で。”戦力にならないアーチャー。
いても多分足手まといになるだろうけど、その心遣いに思わずほろっと来た。

予想どおり、2-Aの私のクラスは大変だった。口火を切ったのは綾子。まあ、その、あれだ。一緒に登校してきた人は誰だ。彼氏か?
違うといえば、私との関係はなんだ?どこに住んでいる...etc
あ、しまった。この嘘、たった一人通じない子がいる。まずいな。何か手を打たないと。



・・・と思っていたら放課後になった。

今日は学校生活で一番人に囲まれた日だった。ぐったりする。いわれてみれば、芸能人が束になっても敵わない美形が、同級生の
従兄弟なのだ。仕方がないか。もう少しましな嘘は・・・・ないだろうな。


夕焼けの中、屋上にあった結界の呪刻を調べた。
ダメもとで横にいるアーチャーに聞いてみた「アーチャー、これ何かわかる?」「わからない」やっぱりダメか。
ところで、アーチャーはどうやって屋上に来たんだろう?私が来る前には来てたし。まだ生徒がいるから階段は使えないと思うん
だけど。
しかし、この結界、術式からすると悪辣極まりない。起動したら結界内の生物が文字どおり融ける。マスターもサーヴァントも
とんでもないやつだ。
・・・しかし、これは私の力では解除できない。結界自体は桁違いの技術でくくられている。見たこともない構術、紋印だ。
とりあえずは一時しのぎが精いっぱいか。でも冬木の町で、こんな暴虐は許せない。

まあ、いいわ、あとはこれと同じものを探して、とりあえず時間稼ぎしましょう。


一通り探して回ったら、7つ見つかった。そのころにはすっかり日も暮れていた。下校時間も過ぎ、学校はひっそりと
静まり返っていた。
結局最初に見つけた屋上の呪刻が起点だった。ここで術者は結界を張ったんだろう。

月が明るかった。

「他はないわね」独り言を言ったら返事が来た「ないよ」
「アーチャーなんでわかるの?」訝しげに聞いた。「探したけどもうない」口調はいつもと変わらず。
「そりゃ、私と一緒に探してたからでしょ?あなたは立ったままだったけど。」話を切り上げた。
長居は無用だ、さっさと終わらせよう。

左の遠坂家の魔術刻印の中から結界消去の呪を導き出し、
「ん?」アーチャーが声を上げた。集中の邪魔、静かにしといて。
結界の起点を魔力をこめて押し流した。消去はできないけど、とりあえず、一時しのぎくらいにはなる。
と、そこへ

「なんだよ。消しちまうのか、もったいねえ」
唐突に第三者の声が乱入してきた。
がばっと立ち上がり声のほうへ向きなおった。給水槽の上にそいつはいた。

獣じみた雰囲気を浮かべ体に密着する青いボディスーツのようなものを着ていた。
護身用に持ってきている宝石の存在を確認しつつ「この結界は貴方の仕業かしら?」だったら許さない。

人懐っこい笑顔をして「いーや、小細工は嫌いだ」
「俺らは戦うのが本業だ、そうだろ、黒いにーさん」笑顔は笑顔でも獲物を前にした豹のような笑顔でアーチャーの方を向いた。
くっ、やばい、本業のサーヴァント。うちの顔だけサーヴァントでは勝てない。
どうにか回避しないと。
暗くなった、月が雲で隠れたのだろう。青いサーヴァントから視線を外す勇気はない。

「ほう、俺のことがわかるみたいだな、つーことは俺の敵だな、魔術師」
その手に赤い槍が見えた瞬間、考えるより先に体が動いた。
思いっきり、全力で真横へ跳躍する。フェンスに体当たりをした恰好で止まった。
アーチャーも跳躍したみたいだ。見える範囲にいない。

「ん?ずれたか?」どうも目標からずれたらしい。そう言いながら給水槽から降りてきた。
「しかし、良い反応と度胸だな、魔術師にしておくのはもったいねえな」さっきまで私が居たところに刺さった槍を抜きながら。
青い獣は言った。
まずい、次の瞬間、あっという間に詰めて来て赤い槍をなぎ払ってきた。退路がない。
駄目だ、魔術も間に合わない。と思ったらフェンスが後ろに倒れた。背中を押しあてていた私はその拍子で、空中に放り出された。
頭から落下した。そのおかげで、死の一撃から逃げることができた。

下はコンクリート。
・・・けど、死ぬのは既定事実のような気がする。

浮遊魔術を起動する直前、黒いロングコートをはためかせた魔鳥のようなアーチャーが横に居るのに気がついた。
一緒に付き合ってくれるの?律儀ねぇ。

と思ったら空中でいきなり横に引っ張られた。え?・・気がついたら校庭に居た。
校舎から100mほど離れているだろうか。ついでに言うとアーチャーに掬い上げられたように抱かれていた。

コレハ、お姫様抱っこ?ト、イワレルモノデハ、ナカロウカ?思考が止まりそう。
顔を真っ赤にしつつ「ちょっちょっ、あ、ちょっと、」やっぱり突発的なイベントに弱い私。今は殺し合いの最中なのに。

ズジャッと音がして、目の前に青い獣が現れた。「てめぇ、おもしれえことするじゃねーか」
私を下ろして前に立つアーチャー、のほほんとした表情は変わらない。
「ちょっと、アーチャー、あなたでは無理よ。さがって」あ、しまった、クラス名いっちゃった。
「ほう、てめえはアーチャーか?てっきりアサシンだと思ったがよ」以外そうに青い獣は言った。

「そういうあんたはランサーね。」悔しいから断言してやった。アーチャーの前に出ようとしたが手で止められた。
「ハッ、どうしてわかった。なんて聞くのは愚問だな。これを見りゃ一発か。で、いいぜ、アーチャー、弓を出せよ。それぐらいは
礼儀だ、待ってやるぜ。」舌舐めずりしそうな雰囲気を醸し出している。こいつは根っからの闘士だ。
アーチャーは答えない。自然体でたったまんま。
「アーチャー?大丈夫なの?」おそるおそる聞いてみた。
にんまり笑った。大丈夫らしい。ほんとかな?まあ、でも私ではランサーに勝てないし、私が負けたらアーチャーも
やられるわけで・・・

結局はどっちが先かって問題か。

「そぅ、じゃあ、アーチャー、頑張って」つぶやくように言った。邪魔にならないように離れた。
アーチャーを見殺しにして私は逃げる、という選択肢もある。普通の魔術師はそうするだろう。
でも、そこまで非情になれなかった。いや、虚言を弄しても仕方がない。私は人が死ぬのを見たくないのだ。魔術師でありながら。


「けっ、ようやくか、てめえはねぐらに帰って・・・・」話の途中でランサーが槍を掲げ飛びのいた。
額から血が流れている。
「あ、おしい」のんびりとした声がした。
え?何?何したの?何も見えなかった。アーチャーも動かなかった。なのに・・・・

ランサーが目まぐるしく動き出す。赤い槍を振り回す、電光のように突き出す、払う。
高密度の魔力を纏った槍の回りで時折火花が散る。

傍からみると滑稽だが、当の本人は本気の表情だ。翻ってアーチャーはいつものまま。茫洋とした雰囲気のまま・・・。

混乱した。どうも、アーチャーが何か攻撃しているようだ。ランサーは守勢に回っている。
20m程ランサーが一気に飛び下がった。

「てめぇ、何を撃ち出してやがる」歯ぎしりをしながらランサーが唸るように言った。
え?アーチャーが勝ってるの?一般人なのに?英霊を?私は混乱した。

どうもアーチャーがランサーに何かを撃っているようだ。魔力は微々たるものしか気配がないけど・・・・

「企業秘密」のほほんとアーチャーが答える。ほんっっとに危機感や緊張感のかけらもない声。

ランサーは槍を風車の様に回しながら、さらに下がった。本当にかすかにぴうんっと何かが鳴る。火花が散る。
あの火花は金属がぶつかったときに出る火花ではなさそう。エーテルの微小な塊・・かな?
私は呆けていた、見とれていたというのが正しい。
アーチャーはやはりアーチャーなのだ。英霊ではないけれど、英霊と互角、いや、それ以上に戦えるサーヴァントなのだ。
召喚した時に感じた、強大な力はやっぱり目の前の黒い天使のことなのだ・・・
私は少し感動していた。涙も出ていた。私は間違っていなかったんだ。召喚は成功してたんだ。


「くっ、さすがはアーチャーということか。」何か納得したようにランサーが言う。
その言葉で我に返った。涙を拭く。

「一筋縄ではいかねぇな。じゃあ、俺も本気を出さしてもらうぜ。」
アーチャーは無言。まあ、もともとあんまりしゃべるほうじゃないけどね。
「この距離はアーチャーだけのものじゃねえぜ」30mほど離れたところで、ランサーの気配が変わった。
クィッとランサーの体が沈む、さらに獣じみてきた。殺気がほとばしる。立ってられない。足がガクガクする。背筋が凍る。
「あ、あれはまずいなー」緊張感のない声でそういわれても・・・アーチャー

魔力が渦を巻いてランサーの槍にからみつく。あ、あの槍はヤバイ。あれを使われるとヤバイ。本能が警告する。
ランサーは槍を振り回す。アーチャーの攻撃を受け流しているようだ。
でもそれで集中がなかなかできないようだ。
「中途半端だが、まあいい、わが宝具、受けて・・」

殺気は霧散した。ランサーが振り返って走り去って行く。
「こらまて」いや、そんな棒読みだったら誰も待たないと思うな、アーチャー・・・
血がしぶいた、ランサーの。
「ちぃっ」ランサーが霊体化していった。
「にげられた」相変わらず棒読みだわ、アーチャー。

「どうしたの?」ランサーが走っていった方をみると人影が校舎の陰に隠れていくのが見えた。
「え?生徒?まだ学校に残ってたの?」
「ん」
「ふぅ、助かった。・・でも見られてたのね。記憶を消さなくちゃ。」と言って愕然とした。
見られたら私は記憶を消す。じゃあ、他のマスターは?・・・・殺す。まずい。
「アーチャー、ランサーを追いかけてっ!生徒を殺すのを止めて」あわてて言った。
「ん。」アーチャーも走り出す・・・・いや、あれ、飛んでない?目の錯覚?
遅れて私も走り出す。魔術で強化して走るので100mは世界記録を超える。けど、追いつかない。
「くっ・・なんて間抜け・・!!」自らのうかつさを呪う。



校舎の廊下には床に倒れた生徒と、首筋に手をあてているアーチャーの姿があった。
生徒の胸に穴が開いていた。
「アーチャー、ランサーを追って。マスターを確認したいの」

明るくなった、雲が流れたようだ。

その時、誰か分かった。衝撃が走る。
「なっ、なっ、なんでアンタが。やめてよね。なんだって、アンタが・・・」
衛宮士郎だった。
「知り合い?」「そうよ、ちょっと因縁のある・・」アーチャーがいた。
ランサーを追いかけるように言ったと思うんだけど「ランサーは?」「今追いかけてる。」「???」相変わらずよくわかんない。
でも集中するのはこっちだ。

これは、私の責任だ。あの瞬間気を抜いたからだ、すぐにランサーを追いかけていれば・・・・・唇を噛む。
できるか?身につけてある、あのアーティファクトが存在を主張している。確かにあれがあれば、切り札としてとっておこうと
思っていたが、今がそのときなのだろう。
失敗するかもしれない。でもどのみち切り札はなくなるんだから、わたしにとっての結果は変わらない。

わたしでは、心臓を破損して、脳死寸前なんていう人間を蘇生させる力も技術もなかった。だから、足りない部分は力ずくでこう、
ガァーっとツギハギするしかなかった、まだ息があって助かった。完全に死んでいたら、それこそ魔法だ。
まだ生きていたから。出来うるだけの事をして、助けただけの話。
その代り、アーティファクトのルビーのペンダントは完全に魔力がなくなった。

「失敗してたら目も当てられなかったけど、成功したからいいわ、多少の充実感もあるし。」強がって見た。
ふとアーチャーの方をみると、なんとなくやさしい目をしているように見えた。認められたようでちょっと嬉しい。
「アーチャー、こんなとこでぼーっと見てないでランサーはどうしたの」照れ隠しにガァーっとがなって見た。
「逃げられた」なんか手をぱっと広げながら。どうも霊体化して逃げたと言いたいらしい。


「そう、じゃあここから離れましょう」多少の疲れをにじませながら、そう言った。


アーチャーに確認をとりながら、一応ランサーの足跡を追って見た。
今いる冬木大橋のところで切れたらしい。アーチャーはなんでこんなことがわかるの?
聞いてみたら「企業秘密」だって。
ということは敵マスターは新都にいる。のかな。

公園の前を通りかかった時、ん?視線を感じる。横にいるアーチャーを見た。
「アーチャーも感じる?」「ん」肯定の返事が返ってきた。
いきなりアーチャーが歩き出す。一本の街路樹に近づくと何かが落ちてきた。真っ二つに割れたカブトムシ。
「何それ?」「視線の元」
・・・確かにもう、視線は感じない。自然と表情が厳しくなる。虫を使い魔にしてたのだろうか。
「と、言うことはランサーか別のマスターにばれたわね。いいわ、作戦会議を兼ねて、いったん帰りましょう。着替えとかも
しておきたいし。」そう、まだ制服だった。補導されてはたまらない。


帰り道、家の近くまで帰って来てから、ペンダントをあの場に置き忘れてたことを思い出した。
今から戻って鉢合わせしても面倒なので、諦めることにした。どうせ、もう魔力もないし。

家に帰って、服を着替えてソファに崩れ落ちた。とうとうサーヴァントに遭遇してしまった。聖杯戦争が現実見を帯びてきた。
今になって恐怖心が出てきた。あれがサーヴァント、サーヴァント同士の戦い。
でも、アーチャーが強かったってことは、とってもうれしい誤算。というか私が早とちりしただけなのかな?そういえば、
アーチャーは自分から弱いなんて一回も言ってないし。

でも、あのサーヴァントはどこの英雄かな?赤い槍の英雄か。あのまま宝具を使わせてたら真名も分かったかな?
「アーチャー、さっきのサーヴァントの正体ってわかる?」返事がない。

ん?アーチャーが何か考えている。
「・・どうしたの?」いやな予感がして聞いてみた。
「さっきの少年が危ない。」・・・え?
「急ごう。」と玄関に向かっていく
「ちょっちょちょっと、どう言うこと?」あわてて追いかけながら聞いてみた。
「あの少年は生きている。」一言で分かった。
そう、生きている。目撃者は・・・・・消せ。なんで、こんなに間が抜けてるんだろう。自分が嫌になる。
家を出て知らずに走り出した。が、すぐ止まった。「そう言えば、衛宮君の家知らない。」「こっちだ」アーチャーが先導する。
「え?アーチャー。知ってるの?」「知らないけどわかる。が、急ごう。」
アーチャーがいきなり私の方を向いて片手で抱き上げた。「えっえっえっえぇ~」顔が赤くなる。と、何かにひかれたように体が
跳ね上がった。「うわっわっ」空中をすべるように移動していく。

黒い天使に顔を見せるのが恥ずかしいのか、月も雲に隠れている。

・・・ここまで来たら、ちょっと正確なところを聞かなければならない。アーチャーの本当の力を。

住宅地の端、郊外に近い武家屋敷に辿り着いた。人気は・・・・屋敷の中。あの強烈な気配もある。まずい。
「アーチャー、中の・・・」指示を出そうとしたとき、強烈な光が輝いた。

あれは・・・サーヴァントの召喚・・の光。その直後、金属を打ち鳴らす音が聞こえた。

このタイミングでの突入は躊躇われた。「ちょっと様子を見ましょう。」アーチャーをみると特に異論はないようだ。
しばらくして巨大なマナの奔流が走り、ランサーが離脱していった。

次の瞬間、アーチャーは私を抱えて飛びずさった。ランサーと同じく飛び出してきたモノがさっきまで私が居た場所に落ちてきた。
着地と同時にこっちに突撃してきた。アーチャーは私を抱えている分、不利だ。小柄な影は何かを電光のように突き出してきた。
正確にアーチャーの心臓を狙ってきた突きは、盛大な火花を散らせながら上にそれる。アーチャーが何かしたようだ。
完全にはかわしきれなかったのか左肩から血が飛び散る。
「アーチャーッ!!!!」
小柄な影が何かを感じたか手にもった何かを振りながら後退する。「セイバー、やめろーっ!」そこへ門から飛び出してきた影が叫ぶ。





風が吹いた、運命のように。
吸い込まれるような漆黒の天に青い光を放つ月。運命の輪を回すように月光があたりを照らす。

金砂のような髪、強烈な意志を秘めた聖緑の瞳を持つ可憐な騎士がそこに居た。