怜悧な光、銀色の月光の下、私は絶望していた、屈辱だった。
戦いに明け暮れ、ほとんどの戦いで勝利を収めてきた。不利な状況も数多く経験していた。しかし・・・

私は歯ぎしりをしながら見ているしかできない。まだ、名前も知らないマスター。
私を見て呆然としていたマスター。純真さと可能性を感じたその瞳。
最優のサーヴァント・・・セイバーたる私が・・・・・

全身を苛む激痛をこらえながら、マスターに敵マスターが近寄るのを許さなければならない。
直感が働く、動けば・・・・マスターが殺される。
塀の中から感じた異質な気配。黒衣のサーヴァントに違和感を感じる。
アレは存在してはいけないモノではないのか?
アレはここにいてはいけないモノではないのか?
アレは・・・


Chapter 5 Side-A 決意・セイバー

敵マスターが私のマスターに近づく。マスターと同じくらいの年齢の少女だ。赤いコートを着ている。
魔力に充ち溢れた強力な魔術師。前回の戦いの中でもあそこまで強力なマスターはいなかっただろう。
不穏な気配があれば、この身が切り刻まれても倒す。そう思っていた。

「あなたはセイバーね。落ち着いて。今は戦う気はないわ。」わたしの方を見て少女がそう言った。
「それを信じられますか?」硬い声が出た。「信じてもらうしかないわね。証はないけれど。」
この少女は信じられる。そう感じた。黒衣のサーバントを見た。月を見ていた。視線に気がついたのか、視線をよこす。
うっ、一瞬呆けた。湖の乙女たちが見たら壮絶な争いが起こりそうだ。少なからず気力を使い頭を振り、目の前の現実に引き戻す。
「わかりました。」少女に視線を戻し、剣を収める。

「良かった。じゃあ、少し衛宮君の傷を見るわ。」マスターは知り合いのようだ。「血はもう止まってるわね。自己治癒魔術でも
使ってるのかしら、でもさっきは・・・」

知らない間に、激痛がなくなっていた。なぜだ。
「アーチャー、とりあえず、この子を家の中に運びたいの手伝って。」
「私がやります。アーチャーのマスター。」立ち上がりながら言った。傷はふさがっている。
「・・・なんで、私がアーチャーのマスターってわかるの?」呆然と少女が言う。貴方が先程言ったではないですか。
「・・あ、またやっちゃった。まあちょうどいいわ、私はアーチャーのマスター、遠坂凛よ。」堂々としている。良いマスターだ。
「私はセイバーです。真名までは言えません。」これは譲れない。「いいわよ。セイバー。私のことは凛と呼んで。」
「わかりました。」

リンはさっさと家の中に入る。武装を解いてからマスターを掬い上げて後に続いた。「ここが良いわね。ここにおいて。」
引き戸の壊れた居間にマスターを横たえる。
「えっ、嘘、傷が塞がってる。なんで?」傷口を見た凛が驚いて言った。「セイバー、貴方、なにかしたの?」「いえ特には。」
「ただ、ひょっとしたら私の治癒力が逆流しているのかもしれません。」
「なるほどね。まあ、これならもうすぐ気がつくんじゃない?」
確かにマスターは呼吸が落ち着いている。頬に赤みもさしてきている。もう大丈夫だろう。

「しかし、衛宮君がマスターとはねぇ。迂闊だったわ。2年間近く魔力をよく隠してきたわね。」凛が独り言を言っている。
マスターの意向を把握せずに判断することは、サーヴァントとしては失格だろうか?と考えつつ、アーチャーのマスターは敵にしない方が良いように感じた。
だから言ったのだ。自分たちの不利になることを。
「リン、私には魔力があまり流れてきていません。魔力の回復も難しいでしょう。」一瞬でリンの顔がこわばる。突き刺すような視線が来る。
「・・セイバー、なぜそんな不利をさらけ出すの?」そっちの論点を突いてきた。であればリンは信頼できる。
「できれば、あなた方と敵対したくないからです。これは先の信頼の証です。」「馬鹿ね、明日になれば敵同士なのよ。」ぷいっと顔をそらしながらリンが言った。

「あれ?そう言えばアーチャーは?」「いませんね。」確かに気配もない。「・・・普通、休戦してるとは言え、他のサーヴァントといるマスターを放っておくものなのかしら。」頭を抱えたリンがいた。

「・・えっ、月が奇麗だから散歩に行ってくる?もうっ」レイラインを使って会話しているようだ。

しばらく沈黙が続いた。

「リン、一つ聞かせてください。」マスターがまだ起きそうになく、沈黙が怖くなったので声を上げた。リンは顔を赤くして「えっ、あっな、何?」どうも私を凝視していたようだ。何か変なところがあるのだろうか?
「アーチャーのことです。」室内が凍った。リンから魔力の高まりが感じられる。「何を聞きたいのかしら?セイバー」「はい、彼は本当にサーヴァントなのでしょうか?」

黒衣の美影身、ロングコートを羽織ったサーヴァント。あの容姿は夢ですら見たことがない。魂に刻印されるような姿。
昼より夜、太陽より月が似合うその姿はアーチャーよりはアサシンの方がイメージに近い。
しかし、私はゾッとしていた。正直アレとは戦いたくない。私でさえ魅了されるような容姿だが、本質は・・・違う・・。


Chapter 5 Side-B 決意・凛


「そうよ、私のサーヴァント、アーチャーよ。」セイバーから出た問に対する回答、正直自信がない。
この一日、ランサーとセイバー、どちらにしても互角以上の戦いをこなしたサーヴァント。しかし、その戦闘自体、想像を絶する。
まず、アーチャーは動いていない。弓はないがアーチャーらしく遠隔攻撃を得意としているようだ。でも、さっぱり攻撃方法がわからない。
身体能力も優れているようだが、魔術も使わず空中を移動する。なんてでたらめな奴。

「うっっ・・」「マスター!」衛宮君がそろそろ、気が付きそうだ。セイバーが心配そうに覗き込む。
「うぁ、ここは、・・うわわわわっっっ」気がついた途端、覗き込んでいたセイバーにびっくりしたのか、飛び起きた。
その体制で起きたら・・・
ゴチンっと音がして衛宮君とセイバーが激突した。あれは頭同士かな、少女漫画のようなキスシーンとかにはならなかったようだ。
お互い額を抱えて赤くなるな。

「そろそろ、お話ししてもよろしいかしら?衛宮君」ちょっと意地悪しちゃえ。
「うっ、え?え?えええええええええええええええええええええええ?なんで遠坂がここに・・??」呆然と私を見た。失敬な。
「わからないの?セイバーのマスターさん。」
「マスター?セイバー?この子はセイバーっていうのか?遠坂?」おかしい、彼には知識がないのだろうか?
「貴方が呼び出したんでしょ、そのセイバー」
「俺が?」

・・・衛宮君には聖杯戦争の知識もなく、魔術師としての一般的な知識すらなかった。
今の引き戸を元通りにする魔術を見せ、私が魔術師だということを納得させたぐらいだ。
そのうえ、セイバーと名前の交換もしておらず。ここでしたくらいだ。
それではシロウと。ええ、私としては、この発音の方が好ましい」と言われて赤くなるな、士郎。

そろそろアーチャーを呼んでおこう。


Chapter 5 Side-A 決意・士郎


衝撃だった、遠坂が強力な魔術師で冬木の管理者でであったこと。
聖杯戦争。サーヴァントと呼ばれる英霊の使い魔を呼び出し、殺し合いを行う。最後に残った勝者が聖杯を手にすることができる。
そんなでたらめな殺し合いが平然と行われているということ。
聖杯。何でも望みがかなうという伝説の聖器。
令呪。サーヴァントを従える絆と3っつの絶対命令権。
セイバー。可憐な少女のような容姿でありながら、最強の誉れ高い剣の英霊。真名は俺の魔術抵抗がないってことを含め、今は
教えてくれないことになったが、強大な力を誇る忠実なるサーヴァント。
「申し訳ありません、シロウ。リンがいるからではなく、戦略的に今は明かさない方がいいだろうという判断です。時期が来れば、
いずれお伝えすることになります。」

そして、とどめ。
「なあ、遠坂」「なに?」「俺たち、殺し合いをしないといけないのか?」そんなの間違ってる。
「聖杯戦争を勝ち残りたいのであれば、いずれはそうなるわね。いい、サーヴァントを倒せるのは同じサーヴァントだけよ。
そりゃあ相手が実体化していればこっちの攻撃も当たるから、うまくすれば倒せるかもしれない。けど、サーヴァントはみんな怪物じみてるでしょ?
だから怪物の相手は怪物に任せて、マスターは後方支援をするっていうのがセオリーね。で、てっとり早く勝つにはサーヴァントじゃなくてマスターを狙うの。分かった?へっぽこ。」
この1時間くらいの会話で、”遠坂凛”のイメージがガラガラと崩れていく。
しかし、会話の内容は笑えない。

「さて、聖杯戦争”をよく知ってるヤツに会いに行きましょ。聖杯戦争の監督官。衛宮くん、聖杯戦争の理由について知りたいんでしょ?」遠坂がスカートをはたきながら立ち上がった。
理由なんて、どうでもよかった。こんな馬鹿げたことは絶対やめさせないといけない。殺し合いなんでふざけてる。

玄関をあけると門の前に黒い天使が居た。

一瞬緊張が走ったが、遠坂のサーヴァントだった。しかし、見惚れてしまう。ふと、思いついた。
「遠坂、噂になってた遠坂の彼氏ってアーチャーのことか?」遠坂を見ながら言った
「なっなっなっなっぬぁっ」遠坂が夜でもわかるくらい真っ赤になってる。「あれは、アーチャーが学校まで護衛してくれたのよ。」がぁっって感じで遠坂が吠える。
そか、彼氏じゃなかったか。ちょっと安心。

監督官のいる教会へ行く途中、セイバーがアーチャーに声をかけた。
「アーチャー、聞きたいことがあります。」「何?」のんびりした声。布団の中でまどろんでいるような声だ。気が抜ける・・
「あの時、左肩だけではなく、殺すことも可能だったのでは?」遭遇した時のことを聞いていた。そうだ、あれは俺もわからなかった。いつ攻撃されたのか。
「そうだね」声色に変化はない。
「なぜ、そうしなかったのですか?」セイバーが若干震える声で聞く。剣に生きるものとすれば、侮辱されたと感じたのだろう。
「月が奇麗だったから」・・・よくわからない。遠坂の方をみると、げんなりしている。いつも、こんな調子なのだろうか。
「シロウが気絶した時、私が動いてリンに攻撃を加えようとしたら、シロウは殺されてたのでしょうか?」「うん」雰囲気に変化はない。
「そうですか」セイバーは納得したようだ。なんで納得できるんだろう。
「あ、でも殺さなかったかも」のんびりした声がする。いや、当事者を前にして殺すの殺さないのっていう話はやめてほしい。
「どーいうこと?」遠坂が口をはさむ。「”外”だから」・・・・禅問答か?これは?全員が疑問符を頭に掲げている。
「じゃあ、”内”だったら?」「んー」手刀を首で振るアーチャー。首を斬るということか。
遠坂が真っ青になっている。どうしだんだろうか?


Chapter 5 Side-B 決意・凛


その動作を見たとき、夢を思い出した。気分が悪くなった。
「アーチャー?も、もしよ。”内”で攻撃されたら?」「さようなら」・・・この世からさようなら。か・・・
「子供でも?」「そう」あの夢は本当なのか・・・・
「ところで、”内”って?」「住んでたところ」
ということはアーチャーの世界の”新宿”なのだろうか・・・

まずい、そんな、ある意味殺人鬼なのを暴走させたら・・・
「いい?アーチャー、むやみに攻撃しないで、指示するから待って。」ふとアーチャーの歩みが止まる。私の方をみる。
多少雰囲気が真剣に・・・・なってないか・・。なんか忘れたものを思い出してるような感じ。
でも私は、安全ロープのない綱渡りをしていた。
「いいよ」ほぅーと知らず緊張の息が出た。助かった。
そんな様子をセイバーは真剣に、士郎はぼんやりと見ていた。



協会に着いた。アーチャーとセイバー外で待またせ、私と士郎が言峰と対峙していた。
会いたくはなかったが、仕方がない。
士郎と言峰がやりあっているっている。
聖杯戦争のあらまし、マスターという存在のこと。
参加するかリタイヤするか?との問いに、士郎は参加することを選択した。

これで一通り終わった。

「これで、明日からは敵同士ね」士郎に宣言した。
「戦わないといけないのか?遠坂」士郎が思い詰めたように言う。
「くどいわよ。まあでも戦うのは最後にしてあげる。」私もできるだけ知り合いとは戦いたくはない。

坂道を降りていく。
4人とも無言だ。セイバーは何か考えているようだけど、アーチャーは・・・・変わらない。しかし、アーチャー見てると
今、どんな状況なのかわからなくなる。ただの夜の散歩に思えてしまう。

冬木大橋を通っていく。
これからのことを考える。ランサーとセイバーはわかった。あと4人。

交差点に着いた。それぞれの家に続く坂道の交差点、衛宮士郎と遠坂凛が別れる場所。
「ここでお別れね。義理は果たしたし、これ以上一緒にいると何かと面倒でしょ。きっぱり別れて、明日からは敵同士ね」区切りをつけるために言い切った。
「なんだ。遠坂っていいヤツなんだな」って、何言ってるのよ、このへっぽこ。
「は?なによ突然。おだてたって手は抜かないわよ」
「知ってる。けど出来れば敵同士にはなりたくない。俺、おまえみたいなヤツは好きだ」なんて言いやがりました。あーもう、こいつは!
「と、とにかく、サーヴァントがやられたら迷わず教会に逃げ込みなさい。そうすれば命だけは助かるんだから」ちょっと顔が赤くなったから横向いて言ってやった。
「セイバーより俺の方が短命そうだけどな。」うがぁ。「だーかーらー、その考えろやめなさい!!」「だけどなあ。」」
「おや?大きいね」またかアーチャー、邪魔しないで。
「しらない!!。せいぜい長生きするのね。セイバーもマスターを助けるのよ。」と言って家のある方を向く。


そこに・・白い妖精が立っていた。


「ねぇ。お話は終わり?」幼い声が響く。坂の上にどう見ても10歳くらいの女の子。と背後に巨大な影。
アーチャーの”大きい”はこれか。あれは・・・「バーサーカー?」声に出た。

「こんばんはお兄ちゃん。よくわかったわね、リン。」
「はじめまして。だね、リン。わたしはイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えばわかるでしょ?」
「アインツベルン・・」喘ぐような声が漏れた。遠坂、マキリ、アインツベルンがこの”聖杯”の召喚術式を作った。
アインツベルンは3家の中でも最も強力・・・。
「わかってくれたのね、リン、ありがと。じゃあ殺すね。やっちゃえ、バーサーカー」まずい。

巨体が飛ぶ。バーサーカーと呼ばれたモノが、坂の上からここまで、何十メートルという距離を一息で落下してくる。
私の体が後ろについっっと引かれた。あの屋上の時と同じ感覚。アーチャーね。
「シロウ、下がってください!」セイバーが前に出てバーサーカーに切りかかる。

巨大な岩を削って作った剣らしきものをセイバーの見えない剣が受け止める。
とてもあの小さな体でさせきれないと思ったが、どうも魔力でブーストしているようだ。セイバー自体魔力のカタマリなので、あの戦いでも持つだろう。
「アーチャー、セイバーの支援!」そう言って、宝石を準備する。
「ん」アーチャーは小首を傾げ了承したようだ。そんな動作も魅了されてしまう。だめだめ、集中。
アーチャーの魅了顔って敵マスターより味方に効いてしまうのでは?

「へぇ、リン。その黒いのはアーチャーなのね、アサシンかとおもっちゃった。でもリンが召喚・・・」イリヤスフィールが言っている途中で声が止まった。どうせアーチャーの顔を見たんだろう。
とはいえ少女も虜にするのかー。見境なし?
ということは向こうの世界ではハーレム?か、か、彼女とか、奥さんとか・・・
だぁーーーー、もう、今は戦闘中、目の前の戦闘に集中しないと。

バーサーカーとセイバーは打ち合いをしている。バーサーカーの大剣の一撃を受けたセイバーの体制が崩れる。バーサーカーの追撃の一撃は何故かセイバーの横に落ちる。
セイバーが立て直し切りかかる。
かわそうとしたバーサーカーがつんのめる。バーサーカーが剣で受ける。
剣を思い切り払いセイバーを吹き飛ばす。地面に激突する寸前。勢いが落ち、激突はしなかった。
しかし、そこにバーサーカーの横殴りの一撃。
セイバーが受けた次の瞬間、バーサーカーが暴風のように立て続けに剣戟を放つ。セイバーがすべて受け流した。
一瞬バーサーカーの額、首、胸、腹、手、足。に赤い筋が出た。すぐ消えた。
セイバーの剣が脇を薙いだ。多少傷をつけた。それだけだ。
セイバーが目を見開く。

「なにか面白い攻撃をしているようね。だけどバーサーカーには通じないわ」

「ありゃ」またかアーチャー。横でアーチャーが何か言った。分かった。アーチャーがこう言うときは何か悪いことが起こる。
次の瞬間、バーサーカーの剣がセイバーを捕らえた。首を刈りに来た一撃が何故か軌道がずれ、腹を裂いた。セイバーが血だらけになって吹き飛ばされた。
セイバーは見えない剣を杖代わりに立とうとしているが、あのケガでは・・・・
「セイバァァァァァーーー!!!」逆上した士郎が飛び出す。
「あんの、バカッ」咄嗟に「―――Vier Stil Erschiesung!!」宝石を使って士郎に向いたバーサーカーの視線をそらそうとした。
バーサーカーの体が弾ける、がバーサーカーの体には傷一つ付かない。
「■■■■■■■■ーーーーーーー!!!」バーサーカーが吠える。
「あははっはっ」イリヤスフィールがきゃっきゃと笑う。「バーサーカーを殺せたら、にがしてあげる。」くっ、今のままだとまずい。
イリヤスフィールに気を取られた瞬間、バーサーカーの剣が士郎を捕らえた。あたる前に火花が散った。アーチャーが護衛したのだろうが、それごと振りぬいた。

あれは背骨が折れた。内臓は破裂だろう。辛うじて切られてはいないが、衝撃はもろに入った。
「あはは、もう、終わりね。あとはリンの黒いのだけね」くっ、このままではまずい。
「ふむ、殺せばいいんだね。」茫洋としたままのアーチャーがつぶやく。
バーサーカーがこちらに走り出そうとした瞬間、足がもつれて転んだ。
えっ?何?またアーチャー?
次の瞬間、バーサーカーが口から大量の血と肉片を吐き出した。
「やっぱり内は弱かったね。」アーチャー・・・あなた、一体何者?

「えぇぇぇっ!」叫び声に眼を向けると、呆然としたイリヤスフィールがいた。「信じられない、バーサーカーを一回殺すなんて。」
死んだと思われていたバーサーカーが起き上がる。「いいわ、約束だから、逃がしてあげる。リン、お兄ちゃん。でも次はないわよ。バーサーカー。帰ろ。」

暴風は去った。
残されたものは嵐に巻き込まれた被災者。
しばらく待ってセイバーがなんとか傷が塞がったが、3連戦の疲れが出たようだ。私が肩を支えなければ歩けない。
士郎はアーチャーが肩に担いでいる。
一気に4人はアーチャーも運べないのか、歩いて衛宮邸に向う。
とりあえず、作戦を練らないと・・・






月は相変わらず何もなかったように輝いている。
地上であがいているちっぽけな人間たちを睥睨して。