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 ~interlude~


ふむ、時が至ったかの、よきかなよきかな。
意外と早かったの。走り始めるとあっという間じゃな。
そろそろ使い魔だけでは荷が重すぎるやもしれんな。

何者かがドアを開けた。階段の一番上。
やれたかの?
影が頷く
さようか、では想い人にはわしは手は出さんよ。
ほっとしたような雰囲気で影が出ていく・・・

わしは・・・な。

暗闇の中で蠢くものが一際大きく身を起こした。
抗議の声だろうか、きぃきぃという声が聞こえる。
さて。


~interlude out~



月下の侍がいた。
ただ、立っているだけで隙がない。
セイバーの殺気を、涼風のように受け流している。

セイバーの額に汗が滲む。恐れているのではなく、あまりに合点がいかない為に。
目前のサーヴァントには恐れるべき箇所も、驚異を感じるほどの武装もない。
ただ大太刀を背に担いでいるだけだ。
それが異常だった。英霊特有の宝具も魔力も持ち得ない。ならば倒すのは容易だ。
なのに、彼女の直感はこう告げていた。侮るな。隙を見せたら殺される。
このサーヴァントには、自分を倒す手段がある、


Chapter 9 Side-A 濁浪・セイバー


間合いがつめられない。知識にある日本刀にしては長すぎる刀の間合い。
階段の下と上。男との距離は約五メートル。
駆け上がり、踏み込む前に一度、あの太刀による洗礼を受けるだろう。

しかし、あの太刀からは何も感じない。

だが・・・・

わずかに剣を構え直し、目前の敵を睨むセイバー。
「・・・訊こう。その身は如何なるサーヴァントか」
答えは期待していなかった。
だから呆然とした。

今一度、口の端に笑みを浮かべ

「アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎」
歌うように、そのサーヴァントは口にした。

「ぐっ・・・」
ギリッと奥歯を噛みしめる。

「いささか雅ではないな。立ち会いの前に名を明かすのは当然であろう?
そなたのように見目麗しい相手ならば尚のこと。そのような顔をされるとは心外であった」
佐々木小次郎と名乗ったアサシンは、セイバーの狼狽を楽しむように続ける。

剣を握りなおし騎士の礼をとる。
「・・失礼した。名乗られたからには、こちらも名乗り返すのが騎士の礼儀というもの。」
答えるセイバーの声は重い。彼女にとって、真名を語るのはあまりにもリスクが大きい。しかし騎士としての信念を
汚すわけにはいかない。

「我が名は「よい。名乗れば名乗り返さねばならぬ相手であったか。」」
「いや、無粋な真似をしたのは私であった。」
アサシンはセイバーの声を遮る。

かつんと、あくまで優雅に石段を下り、アサシンはセイバーと対峙する。

「真名など知らずともよい。ただセイバーというサーヴァントが、この刃に破れるだけの話だ。おぬしの持つ剣気は
セイバー以外にあるまいよ。」

背の大太刀を抜きつつ
「さて、言葉は無粋であるな、舞い踊ろうか、セイバーよ。」

その言葉で口火を切った、銀光が跳ねる。剛と柔。あまりに異なる剣士の戦いは、月光の下で大輪の火花を咲かせる。


Chapter 9 Side-B 濁浪・士郎


「・・くっ、はぁはぁはぁ」
目が覚めた。寝汗がひどい・・・・
ふと桜のことを思い出した。今日の俺は如何したんだろう・・・・
何故か急に桜が愛おしくなって・・・・
桜に女性を感じた。

「つっっ」
左手の令呪が鈍く痛む。
嫌な予感がした。

「セイバー?いるのか?」
すったもんだで決まったセイバーの部屋、まあ、俺の部屋の隣なんだが・・・を開けてみた。
もぬけのから。
寝た形跡はある。まだ温かい。そんなに時間はたっていないようだ。

居間に行った。
「セイバー?」
いない。
道場、風呂場、土蔵を見て回ったがいない。

「いない。アイツ、まさか」
いや、まさかも何もあるもんか、いないって事は、アイツ一人で柳洞寺に行ったのか・・・!
そう言えば、明日一成に聞くと行った時、思い詰めた顔してた。
「バカ野郎、まだ体だって治りきってないのに!!!」
セイバーはまだ完全に治っていないと、そう聞いていた。

「ああもう、アイツめ女の子なんだからもうちょっと大人しくしてろってんだ……!」
木刀を持って着替えもせずに外に飛び出して、ろくすっぽ使ってなかった自転車を担ぎ出して、全速力でこぎ出した。


Chapter 9 Side-A 濁浪・セイバー


切っ先が交差する。幾度も交わされる剣の舞は火花と共にいつ果てるとも知れず。
数十合を越える剣撃も両者の立場にいささかの変動もない。
上段に位置したアサシンは一歩も引く事なく、下段に位置したセイバーは一歩も歩むことなく。
時間と気力の削り合い。

百合を超えようかというセイバーの踏み込み、斬撃。
五尺余もの太刀を苦もなく振るい、セイバーの進撃を防ぎ、受け流すアサシン。
返される刃は速度を増し、突風となってセイバーの首に翻る。

それはまさに剣舞であった。直線のセイバー、曲線のアサシン。
幾度も交わされる剣の舞は火花と共にいつ果てるとも知れず。

「なかなかに視えない剣というものはやりにくいものであるな。これほど厄介とは思わなんだ」

アサシンは不動である。これは彼の守りの戦いにすぎない。
後退した私を無理に追撃する必要もないし、上に位置するという有利を捨てることもない。

「見れば刀を見る事さえ初めてなのではないか?なおかつ邪道である我が剣を、ここまで防ぐとは嬉しいぞセイバー」

再び激突する剣と刀。ぎぃん、と何もない空中で止まる太刀。

アサシンの額をうち砕きにかかるセイバー。その一撃を、アサシンはわずかに後退しただけで、躱しきった。
「ようやく、目測がついたな。刀身三尺余、幅は四寸といったところの典型的な西洋の直剣だな」
涼しげに語るものの、それがどれほど卓絶した目利きなのか言うまでもない。

「・・・信じられない。何の魔術も使わず、この打ち合いの間に私の剣を計ったのですか、貴方は」
「所詮、我が剣は邪剣よ。」
ふふっと笑うアサシン
「さて、そろそろ出し惜しみも面倒故な。」
ふわりとアサシンが真横へと下りてきた。

「なっ」
「おぬし、我が剣の有利は上であるが故と思ったか?
まあ、よい、そろそろ構えられよ。でなければ我が秘剣の塵と化す故な、セイバー」
さらりとしたその声に、セイバーの直感が反応した。
両者の間合いは三メートル弱。一瞬で詰めようと踏み込む。目指すはアサシン。
「秘剣燕返し」
軽やかなアサシン
稲妻が落ちる。私の剣撃を上回る速度で、一直線に打ち落とされる魔の一撃。
「くっ」
振り上げた剣を咄嗟に防御に回し、斬撃をはじき返す。
とった。と思った瞬間。
咄嗟に、直感だけに任せて、セイバーは石段を転がり落ちた。
「よくぞ躱したな、我が秘剣。さすがはセイバーということか」

「多重次元屈折現象・・か。」
その剣技のみで宝具の域に達したサーヴァント。

「ふむ、嬉いぞ、セイバー。生前では叶わなかった立ち会いが、今ここに。我はこれだけで十分であるな。」

「・・・・手加減など許される相手ではなかったようだ。失礼した。私の一撃をお返しする。」
大気が震える。剣は彼女の意思に呼応するかのように、烈風と化した。
さらに強く、さらに激しく、さながら竜巻の如く。

セイバーの剣から放たれる風は、今まさにアサシンを飲み込もうと鎌首をもたげていた。


Chapter 9 Side-B 濁浪・士郎


「なんだアレ?セイバーだよな、あそこにいるの?」
柳洞寺に着いた俺を迎えたのは、台風じみた風の音だった。
階段の上、山門の前にはセイバーらしき鎧姿と、着物姿の何者かが対峙していた。
風の中無我夢中で上った。
手の甲に刻まれた令呪が疼いている。
「むっ、これはセイバーの魔力か?
馬鹿野郎、そんな体でなんていう無茶を!!」
それよりも、セイバーは魔力回復ができない。とにかく早く止めないと。

この強風で気が付かなかったが、何かがいる。
「ふざけやがって、こそこそと隠れてないで出てきやがれ!!!」
言った俺自身が驚くぐらい、大きく階段に響いた。
ふと気がつくと風がやんでいた。

「不埒者がおるようだな、ここまでだな、セイバー」
涼やかな声が聞こえる。
「無作法にも割り込んできそうでな。」
和服の男はつまらなげに言って階段を上り始める。
「待て、決着をつけないつもりか?」
セイバーが硬い声を投げかける。
「おまえがこの山門を越える、というのであらば決着はつけよう。だが、それは今ではあるまいよ。此度は
そこの迎えと一緒に帰るがよい。」
そうして和服の男は消えた。

セイバーは何も言わない。
「セイバー?」
声をかけても返答はない。
唐突に、セイバーを守っていた鎧が消えた。無防備な、青い衣だけになった彼女は
こちらに振り返る事なく、ゆらり、と体を揺らし崩れ落ちた。
階段に倒れ込むセイバーを抱き止める。セイバーはぴくりとも動かず、苦しげに目蓋を閉じて、意識を失っていた。


柳洞寺からセイバーを抱えて、ようやく帰って来れた。
何時間たっただろうか。

「・・まったく・・なんだって気を失うんだよ、いきなり」
眠っているセイバーを見つめる。家を飛び出した時は言いたい事が山ほどあったのに、こんな寝顔を
されたら何も言えなくなっちまうじゃないか。

何とか居間に運び、客用布団を持ち込んで寝かしつける。
重労働だった。

お茶でも飲もう。お湯が沸くのをぼーっと見ていた。急須に茶葉を淹れ、お湯を注いで戻ってきた。
湯のみに注いでいる時にセイバーの目が開いた。

「セイバー、起きたか? 大丈夫か?」
「シロウ・・・ここは・・・」
「ああ、家だ。」
「そうですか。」

「で、セイバー、自分が何をしたのか判ってるのか!?」
「私は柳洞寺に赴き、アサシンのサーヴァントと戦いました。その折、私たちの戦いを監視していた
何者かの気配に気が付き、戦いを中断しただけです。」

「違う、そんなコトを聞いてるんじゃない!! 俺が言いたいのは、どうして戦ったのかってコトだ!」
「サーヴァントが戦うのは当然です。シロウこそマスターである貴方が、何故、戦うなと言うのですか?
シロウは戦いを嫌っているようですが、そんな事で聖杯戦争に生き残る気があるのかと。
貴方の方針に従っていては、他のマスターに倒されるだけではないのですか」

「違う。戦うのを嫌ってるんじゃない、俺は、その、女の子が傷つくのはダメだ。そんなの男として
見過ごせない。だから、おまえに戦わせるぐらいなら、俺が自分で戦う」
「何を考えているのですかっ!!」

水かけ論になってしまった。

戦える。戦えるわけがない。やってみなくちゃわからない。やっても無駄だ。
女の子に戦わせるわけにはいかない。女ではなく騎士だ。細かいことにこだわるなバカ。私は英霊だ撤回しろ。
うるさい、食いしん坊。誰が食いしん坊だ。お前だ。失敬な。ご飯3合も食べたくせに。魔力の補充だ。
えーい、戦うのは男の仕事だ。サーバント相手には紙の守り同然だ。
むーーーっお互い譲らなかった。

「わかりました。シロウ、貴方がそう言うなら私にも考えがある。私から一本とるまでシロウを鍛えます。
情け容赦なしに。」
「わかったよ、一本とってやる。」
「では明日から道場で」


・・・・なんか、変な方向に落ち着いた様な気がする・・・・

翌朝は猛烈な稽古で、何回も失神させられそうになったのは公然の秘密だ。


Chapter 9 Side-C 濁浪・凛

昨日は公園での出来事の後、家に帰ってきた。
正直、精神的に疲れていたこともあって、そのまま寝ることにした。
今、私はどちらの道を進むのか判断を迫られているような気がする。
要は、今まで、自分が魔術師だ。と思っていたことが如何に甘い考えであったのか。ということ。
犠牲が怖い、死が怖い、無が怖い・・・・
本当に真理を追及するのであれば・・・・・
知らない間に眠りについていた。


夢を見た
また、アーチャーの夢

死があまりにも軽い街
死があまりにも近い街
驚異があまりにも多い街
怪異があまりにも多い街
神秘があまりにも多い街
悲嘆があまりにも多い街
でも、
生命に充ち溢れている街

どこかで人間が喰われ、どこかで妖物が生まれる
どこかで妖物が駆除され、どこかで人間が生まれる

アーチャーと同じくらい美しい死の影
アーチャーと同じくらい美しい生の影

その中をアーチャは茫洋と歩いて行く


目がさめた。直接の死体なんかが出てこなかったので、少しはましだった。
まあ、景色はいまだに慣れることができないけれど。

しかし、アーチャーの住んでいる街があの夢のとおりだとしたら、そこは私の感覚では地獄かもしれない。
・・・時計塔の人はどう感じるか知らないが。

とりあえず、今日は金曜日、学校に行けるのも、そろそろ終わりかもしれない。
徐々に聖杯戦争が激しさを増している。のんびり学校にも行けない。

まあ、でも今日は士郎の返事を聞く日だから、学校に行きますか。
アーチャーもいつものように”散歩”してくれた。


Chapter 9 Side-B 濁浪・士郎


いつも通り学校についた。
昨日というより、今朝は散々だった。
セイバーは魔力回復の為に家に残してきた。
一成と慎二に確認を取らなければ。
・・・と思ったが二人とも今日は休みだそうだ。これでは学校に来た意味がない。
1時間目が終わり、どうしたもんかな?と考えてながら廊下を歩いていたら、ばったり遠坂と出会った。
そうか、遠坂の質問の回答が残ってたか。

遠坂が屋上のサインをして、そのまま階段の方に向った。

2時間目をサボって、屋上に来た。

「で、どうなのよ」
両手を腰に手を当て、遠坂が聞いてきた。

聖杯を争奪する戦争
マスターもサーヴァントも夫々の思いを胸に例外なく聖杯を欲する。
サーヴァントによってはマスターに危害を加えても聖杯を求めると聞いた。
セイバーが俺の言うことも利かすに飛び出したのは、その辺の事情があるのだろう。
マスターと和解しても根本的な所は解決しない。
聖杯を欲するということ。
でも、もし悪意のあるマスターやサーヴァントが聖杯を手にしたら・・・・

「俺は、こんな馬鹿げた争いをしたくない。でも邪な思いを持った奴に聖杯を渡したくもない。
だから、俺はこの聖杯戦争自体をなくしたい。特に聖杯もいらない。もし勝ち残ったとして
セイバーが欲しいんだったらセイバーに渡す。」
「ふうん」

「そういう遠坂はどうなんだ?お前は聖杯が欲しいのか?」
これだけは確認しておかなければならない。
「はっ、バカね。私は聖杯なんかで叶えたいものなんてないわ。」
「ならどうして?」

「そこに戦いがあるからよ。ついでに貰える物は貰っておく。聖杯がなんだかは知らないけど、い
ずれ欲しい物が出来たら使えばいいだけでしょう?人間、生きていれば欲しい物なんて限りないんだし」
「えっと、遠坂悪いんだが、よくわからないんだが・・」
「もう、このへっぽこ、いい? 私はねただ勝つ為に戦うの。聖杯なんて正直どうでもいいわ。
あ、あるとすれば、アーチャーを送り返すことくらいかな。」

心は決まった。
「遠坂、俺は聖杯戦争から逃げない。でも、最後まで勝ち残りたい。後のことは勝ち残って決めたい。
ただ、無知な俺だけでは勝てないと思う。
・・・だから、協力してほしい。」

「・・・ふうん。そう。じゃあ、最後になったら私と貴方で一騎打ちするのね?」
「それは、最後に残った時に考えたい。」

「協力の代償は?」
「え?」
「魔術師の基本でしょ、等価交換。貴方は私の協力の代償に何を差し出すの?」
「・・・・俺の命、でいいか?」
「なっ、アンタねぇ。その考え方、やめなさいって言ったでしょっ。
でも、そうねぇ。あんたの命が代償ってことは、協力期間は私の奴隷になるってことね。」
遠坂が悪魔の笑みを浮かべながら聞いて来る。背中に赤いオーラが見えるような気がする。
「うっ」
俺は飛んでもないことを代償に申し出たのだろうか、悪魔に魂を売り渡したような・・・・
「分かったわ。いいでしょう。聖杯戦争の最後まで協力関係ということで。ふふっ」
トオサカさん、その悪魔の笑みをどうにかしてください。
オヤジ、女の子って怖いな。・・・オヤジが親指立ててグッジョブしている姿が浮かんだ。

「さあ、そうすれば、まず、アンタの持ってる情報渡しなさい。」
赤いあくまが迫ってくる。ニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロ

・・逃げられなかった。

慎二のこと、アサシン、キャスター、柳洞寺のことを洗いざらい話した。桜とのことは内緒にしたけど。

遠坂が手を顎に持って行って考え込んでいる
「どうした遠坂」
「いや、慎二よ。あの子は魔術回路はないはずよ。魔力もないし。なのにマスターになったり、中央公園で
魔術を使ってきたり、とにかく何かおかしいわ。」
遠坂は昨日、中央公園で慎二に襲われたらしい。

柳洞君より、今は慎二の方ね。突き留めないと。
・・・・桜!!

「遠坂! 桜が危ない。」
狼狽して言った。
「何で桜が・・・」
しまった。って顔をした遠坂。
「急ぎましょ、桜を保護しないと。今日は学校来てる?」
「多分」
「じゃあ、ちょっと捕まえましょう、授業中でも関係ないわ!」

そう言って、校舎の中へ駆け込んだ。

「やあ、衛宮に遠坂、そんなに怖い顔をしてどこ行くのかな?」
慎二が居た。
「お目当てはコレかな?」
と言うと、後ろから桜の首に腕をまわした腰まで届く長い紫の髪のサーヴァントが出てきた。
「先輩・・・」
桜が怯えたように声を上げる。

「「慎二!!」」
声がハモる。
「はっ、お前たちが協力しているってのは、はなから判ってた」
フッと鼻で笑う、慎二。

「おーっと、サーヴァントは呼ぶな、ついでに動くなよ。でないと、桜がどうなっても知らないよ?ライダー!」
サーヴァントはライダーらしい。
ライダーから桜を受け取りながら慎二が言う。何か薬品の入った小瓶を取り出した。

「おまえもあいつの泣き顔が見たいだろうからさ、特等席で見せてやるよ」
「ゃっいや、です、わたし・・・! 話してください、にいさん」
泣きながら訴える桜。つかまれた腕を解こうとするが、彼女にそれだけの力はなかった。
慎二は嫌がる桜を引き寄せ、手荒く首を掴む。
「そう逆らうなよ桜。思わず殺したくなっちゃうじゃないか。おまえはさ、ただ僕のいうコトを聞いとけば
いいんだよ」
嘲るように慎二が言う
飛びかかりたいがライダーが邪魔をして飛びかかれない。目の前のサーヴァントは俺たちにとっては死の象徴だ。
「止まりなさい。それ以上前に出れば、マスターは彼女を傷つけます」
強く噛み締めた歯が、ギリギリと悲鳴をあげる。

「やだっ! 違う、約束が違う・・・・! 先輩には、手出ししないって言ったのに・・・!」
桜が髪を振り乱して抗う、が次の一言を聞いて力が抜けて言った。
「それは御爺様との約束だろ? 僕には関係ないね。」
「そうそう、そうやっていい子にしてな。」

「おまえ、本気でそんなコトやってんのか慎二」
「当然だろ。本気だから最後の切り札を使ってるんじゃないか。この期におよんでなに寝ぼけてんだよ、おまえ」
「っ・・・!」
(・・何かおかしいわ、衛宮君)遠坂が小声で告げる。

「慎二。おまえ、桜に聖杯戦争の事を話したのか!!」
怒りを隠しきれず慎二を睨む。
「ああ、そういうコトか? ああ、安心しろよ衛宮。おまえが黙ってるもんだからさ、ちゃんと一から十まで
話してやったよ! たちがマスターで、今まで殺し合いをしてきたってさ!」
桜は顔を背け、懸命に歯を食いしばっていた。

「さ、そろそろ、そいつの相手をしてもらうかな。
遠坂は両手を頭の上に上げて動くなよ。」

「ついでにライダー、やれ。」

次の瞬間目の前が真っ赤になった。結界が発動した。
「「なっ」」
またハモる。

「魔力の補充だよ、遠坂。そんなこともわからないのか?」
ふふんと言いながら馬鹿にしたように答える。
重圧がかかる。
遠坂が歯を食いしばっている。

「慎二、これはキャスターの「あーそんなこと?」」
慎二の声がかぶる。
「嘘にきまってんじゃん」
「慎二ぃ!!」

「とりあえず、結界よりもさきにやることがあるんじゃない? で、遠坂は手を上げとけよ。」

生身でサーヴァントと戦えという慎二、なぶり殺しにしたいらしい。
俺がそこまで憎まれているとは思わなかった。
横目で見ると遠坂は手を上げて、この上もなく屈辱的な顔をしていた。食いしばった唇から血が流れていた。

ライダーの体が跳ねる。両手を交差して打撃に備える。瞬間、骨ごと吹き飛ばしそうな衝撃が、両腕を貫いた。
「っ、ぐっ。」
意識が遠くなる。なんとか意識を手繰り寄せる。両腕はたった一撃で砕かれた。
「ライダー、もう少し手加減してやれ。」
慎二が言う。
「せんぱいっせんぱいっせんぱいっせんぱいっ」
桜が叫ぶ。
「士郎!!」
遠坂が叫ぶ。

ライダーに容赦はない。無機質に機械のように胸を蹴ってきた。
吹き飛んだ。
肺がやられたかもしれない。手加減をして蹴ったようだ。
・・なんだ?朦朧とした意識で違和感を感じた。

「いいぞ、ライダー、ジワリジワリなぶり殺しにしてやれ。」

ライダーが飛び上がった、一瞬目の前から消えた。
天井を使って三角飛びをしたのか後ろに気配がある。
(いきますよ、あとはあなた次第・・・)そんな声が聞こえた。
背中から暴力的なまでの回し蹴りが俺の背中をぶっ叩く、丸太で思いっきり殴られたような衝撃。
飛ばされた先は・・・・・慎二。
「うわ、なにすん・・・」
ぐしゃ。慎二にぶつかった。
ライダーも一瞬で慎二の後ろに回ってきた。
その衝撃で桜が慎二の手から離れる。同時に慎二の手にもった小瓶も落ちて・・・割れる。中身が飛び散る。
濃密な臭いがする。

俺は力を振り絞って、桜と慎二の間に割り込み、桜をかばう。

「アーチャー!!」
遠坂が叫ぶ。
ライダーの首が落ちる。


「えっ?」


時間が止まった。


・・・痛い。
下を向くと自分の胸から手が生えている。
顔を右後ろに向けると、きょとんとした、ぼんやりした桜の顔が見えた。何が起きたのかわかっていない顔。
「さ、さ、さくら・・・」
桜の左手が手刀の形をして、俺の胸から生えていた。
俺は崩れ落ちた。

一瞬遅れて血が噴き出た。


Chapter 9 Side-D 濁浪・桜


急に意識が朦朧とした。
ぼんやりした夢のような状況
ああ、先輩が体を張って私を守ってくれている
いくばかりかの幸せと、罪悪感を感じる
これは夢ね。
先輩が私のために戦ってくれる夢。


ざく。


え?
何?なに?ナニ?
私は、わたしは、ワタシハ
何で自分の手が勝手に動いてるの?カッテニセンパイヲサシテイルノ?
・・・・先輩がこっちを向く。
私の手が抜けると同時に、崩れ落ちた先輩の胸から血が噴き出る。

マッカナ、チ、ち、血、チ、ち、血、チ、ち、血、チ、ち、血、チ・・・・
「いやぁぁぁぁ~」
私のどこかで、ワタシのナニカがこわれた音がした・・・・