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Interlude - 0 日常


冬の寒い日、新宿にも雪が降る。
雪は地上の汚濁を白く覆い、寒さに弱い妖物はなりをひそめる。
まあ、反対に雪の下を隠れ蓑に獲物を狙う妖物がいるので、危険性はあまり変わらないが。

事務所となっている6畳の和室で煎茶を飲みながら新聞を読む。新宿TVと新聞の”今日の危険現象発生予測図”と
”今日の抗争予測コラム”をみれば、だいたいのことはわかる。
副業の方には特に依頼もなく今日も平和だ。

「しゃちょー、ちょっと手伝ってくださいー」店の方から声がかかる。最近雇ったバイトの子だ。店番を任せている。
「ん」よっこいしょっと、じじむさく立ち上がり店のほうに行く。

「しゃちょー、お客さんいっぱいですぅ」とバイトの良子ちゃん。思わず体重1.5tの肉ダルマを想像するが、ちゃんとした普通の
女の子だ「ぶぅ」。「なんですか社長?」「いや別に、で、社長はやめなさい。」といいつつ店に出る。

喧騒な店内が一瞬で静寂に戻る。区の観光名所に「秋せんべい店」が紹介されてからずっとこうだ。さらに最近は店に行けば
遭遇できる確率が高いとの情報が漏れたのかいつもよりきゃくが2割増しだ。
観光客、主に女の子たちは呆然と、店長お勧め煎餅セットを買っていく。夢遊病者のようだ。夢見心地なのだろう。
「まいどありぃ」商売人らしく、愛想笑いを振りまく。何人か卒倒した客が居る、外の休憩用ベンチに良子ちゃんが誘導している。


店の方に、「ちょっいと邪魔するぜ」と3mほどのメタルな巨人が現れた。両肩にバルカン砲を乗せている。
良子ちゃんが「お客さん。順番守ってくれないと困ります。」さすが良子ちゃん。「うるせぇ、社長を出せ!」怒鳴ったので、
丁重にお帰りいただいた。
バルカン砲と両腕を肩口から忘れて行ったが、巡回廃品回収屋に持って行ってもらおう。
平和だ。

客の中にいかにも魔法街から来ました、という風貌の老人が居た。ここ数日毎日一種類ずつ煎餅を買って行ってくれる客だ。
ついでに言うと、戸山町の雰囲気もある。昼間なのに珍しい。
今日はいつもよりたくさん買い込んでいる。
思わず声をかけた。
「どうしたんですか?今日はいつもより多いですねぇ」
「うむ、煎餅というものに感動したのでな、弟子たちに食べさしてやろうと、な。」なにかあの顔は悪戯を思いついた様な感じだ。
魔法街の人間でまともな性根の人間を見たことはない。半分人間ではなさそうだが。

「はは」

まあ、でもお得様なので、「今焼きあがったばかりの堅焼きとのりです。サービスしときますよ。」紙袋に一緒に入れた。
「ありがたい。」「小分け用の紙袋も入れときますので。」

代金と一緒に結構なサイズの宝石を出してきた。「困ります。」「ひょっとして迷惑をかけるやもしれん故な」入り口を出た瞬間
巻いていた糸の感触がなくなった。
ま、魔法街の住人ではよくあることだ。

客は続く。
「いらっしゃいませ」