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Interlude - 6 依頼


月明かりの下、大通りを避け、裏道を使い、人目を避けるようにひっそりと4つの影が歩いていく。

躍動感のある、しかし繊細そうな赤い少女を筆頭に、深刻そうな表情をした少年が並び、少し離れて2つの影が続く。
小さい影は、全身をハリネズミのように神経をとがらせ、大きな影は天下泰平、のんびりとした雰囲気を見に纏っている。
一目見れば、記憶に焼きつくほどの印象を放ちながらも、不思議とすれ違う通行人はそこに誰も居ないかのように、興味無く過ぎ去っていく。



何故か、夜なのに教会に行くらしい。どうも、この聖杯戦争という争いのコントローラーがいるそうだ。
そんな存在は真っ先に潰せばいい様な気もするが、難しく考えることも無いのだろうか?
まぁ、部外者の僕には気にする必要もないことだ。

そんなことを考えながら、やっぱり人気の少ない石畳の道を歩いていると、隣を歩くセイバーが声をかけてきた。

「アーチャー、聞きたいことがあります。」

何故だか真剣な表情が僕を見据える。僕は彼女に何かしたかな?
少し考えたが、わからない。何だろう?

「何?」
「あの時、左肩だけではなく、殺すことも可能だったのでは?」

セイバーの表情は硬いままだった。
何かと思えば、先ほどの反撃のことを聞いているらしい。特に気にすることも無いと思うが、真剣な目は僕をひたと見据えている。

「そうだね」

「なぜ、そうしなかったのですか?」

何故? 何故だろう。僕にも分からない。

無理やり感情を押し殺そうとしているセイバーが、僕を見返す。
強いて言えば、ここは<新宿>ではないから……かな? よく分からない。
セイバーの瞳に月の光がふっと反射した。

――そうか。

「月が奇麗だったから」

その言葉を聞いたセイバーは、何故だか表情が和らぐ。
僕にはセイバーの考え方がよく分からないし、僕はセイバーじゃないから、わからなくて当然だろう。
まあ、そもそも興味も無い。

「シロウが気絶した時、私が動いてリンに攻撃を加えようとしたら、シロウは殺されてたのでしょうか?」
「うん」

セイバーが幾分穏やかな声で聞いてくる。
サーヴァントという存在はマスター次第だから、マスターがいなくなれば自然とサーヴァントもいなくなる。であれば、簡単な話だ。
セイバーが依頼主である凛に攻撃を加えるのであれば、セイバーのマスターの、あの少年さえ処理すればいい。
特に手の届く所に依頼主がいるのであれば、守らないと仕事が完遂できない。そういう依頼だから。
……とはいっても、今回の依頼自体がイレギュラー極まりないんだけど……
僕は何でこんな不条理な依頼を受けたんだろう?
あれ?
なんでだろう。
ま、いいか、うけちゃったから。

「そうですか」
「あ、でも殺さなかったかも」

ふと、思いついたことをそのまま言葉にしたら、セイバーではなく凛が口を挟んできた。

「どーいうこと?」
「”外”だから」
「じゃあ、”内”だったら?」
「んー」

思いついたこと。それはここが<新宿>ではなくて、区外であり、違う世界であること。
あまり派手に動いて、世界から抜け出せなくなったら困る。特に、店の休業が長引くのは困る。

「アーチャー? も、もしよ。もし、”内”で攻撃されたら?」
「さようなら」
「子供でも?」

<新宿>では普通の話。年齢や男女に惑わされるようでは生きていけない。少年の姿をする妖物や赤ん坊にとりついた悪霊もよくあること。
武器を向ければ即座に武器を向けられる。それも四方八方から。
こことはだいぶ違う。

何故か、凛が口をはさみ始めてから、徐々に真剣な表情になってくる。顔色も悪くなってる気がする。
どうしたのかな?
凛に捲いた妖糸からは大量の発汗と心拍数の増加、血圧の増加が伝わってくる。
極度の緊張状態になってきている。
とどめに、勝手に攻撃するな。ときた。
どうしたんだろう? このままだと脳溢血にでもなりそうだ。
何が問題なのかよく分からない。
一つ分かるのは、先の要求を出したときから、ピーク状態になっていること。
僕を制限する理由は良く分からないけど、とりあえず依頼主の気のすむままに、してあげよう。

――表面上だけでも。