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Interlude - 7 暴風



すべてを凍らせるような風が舞う。
風霊が異邦人に纏わりつきながら、名残惜しそうに離れていく。

相変わらず冴え冴えとした銀光を放つ月が地上を睥睨している。
いや、ただ見ているのは空を見上げる黒衣の麗人のみか。

暴れ狂った暴風は去り、傷だらけになった少女たちは大地に伏している。

爆撃によるものか、大地震によるものか。と思われるほど荒れ果てた道路は、そこで荒れ狂った力の凄まじさを
端的に表していた。

それは、ほんの数分前の出来事。


死を体現するかのような巨人と剣を交える美しい少女がいた。
歯を食いしばりながら、その凄絶な瞳は決して俯くことをしなかった。

その姿を黒いコートを翻しながら秋せつらはのんびりと見ていた。

「アーチャー、セイバーの支援!」

自信に充ち溢れ、しかし、恐怖の気配を無理やり押し込めた少女の声が凛と響いた。

想像はしていたが、雇い主が再び厄介事に首を突っ込んだ。

もう、こればっかりはどうしようもない。
<新宿>の住人だったら……と思いつつも、向こうは向こうで義侠心のある人間が多かったかな。
というか野次馬が多かった。

――なんだかなぁ。これは契約範囲外だと思うんだけど?

軽くため息をつく。

仕方がない。雇い主を殺されるわけにはいかない。……か?
こんなとき、雇い主が死んだら債務不履行になるのか?
戻ったら契約条項を確認しておこう。

「へぇ、リン。その黒いのはアーチャーなのね、アサシンかとおもっちゃった。でもリンが召喚・・・」

そんなことを考えていると白い少女の声が耳に入った。ふっと視線を向けると声が途切れた。

……あの少女はマスターだから、あの子を殺せば、目の前のサーヴァントも消える?
ただ、さっきの雇い主の言葉ではないが、むやみに攻撃はしてはいけないらしい。
暗黙のルールかな?
まあ、言われたのはセイバーの支援だから、こっちは放っておこう。

セイバーの方に目を向けると、セイバーの体制が崩れた瞬間が映る。

支援支援っと。

バーサーカーの腕に妖糸を巻きつけて方向をずらす。
思いっきりずらしたつもりが、ほんの少ししか軌道を変えれなかった。

まあ、セイバーはその間に体制を立て直したから問題ないだろう。

面白かったので、バーサーカーの両足に糸を巻いてみた。
普通だったら、足が絞りあげられてバランスを崩して倒れるのだが、つんのめりながらも妖糸を引きちぎられた。
とても生身(?)の人間のすることじゃない。

じゃあ、ついでに切ってみよう。
バーサーカーの全身に糸を巻きつけ、思いっきり切ってみた。
……切ることは切れたが、輪切りにする前に、やはり引きちぎられた。

ふむ。厄介な。
こんな相手は逃げるが勝ちなんだけど……。

「なにか面白い攻撃をしているようね。だけどバーサーカーには通じないわ」
雪の少女が自信満々に言い放つ。
確かに通じない。一応は切れるが、切断する前に何故か引きちぎられる。
引きちぎられる前に斬るか、引きちぎられないところを切るか。

――面倒だな。

やっぱり、あの子を殺すのが一番なんだけど……。

「ありゃ」
気を取られた瞬間に、バーサーカーがセイバーに致命的な一撃を放った。
妖糸でサポートしたが、遅かった。

首を切断する致死攻撃を、辛うじてずらすことはできた。
が、それた軌道はセイバーの胴を薙ぐ。
赤い血飛沫が夜の道路を彩る。

あら、失敗。どうも、こっちへ来てから感覚が狂っている。早く調整しておかないと。


「セイバァァァァァーーー!!!」
半狂乱になった少年が飛び出すのが眼の端に映った。

「あんの、バカッ」
依頼主の少女が血相を変えて叫ぶ。


少女達の悪夢の夜は、まだ終わりが見えない。