×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

るるる-7

I see the moon,
私は月を見ていたの
And the moon sees me,
月は私を見ていたわ
God bless the moon,
神は月を守護して
And God bless me.
神は私を守ってくれるの

ぽんぽんぽん、ぽ、ぽぽぽぽぽん♪ ぽかぽかぽん♪ ぽ、ぽぽぽぽぽん♪

銃眼が均等に空いた城壁を持ち、天を突く尖塔や大きな堀を抱えたそれは、まさに”城”と呼ぶ以外の
呼称がないものだった。
既に日はとっぷりと暮れており、篝火に照らされた巨大な城が目前に迫ったころ大きなフクロウが音もなく馬車の
窓枠にとまった。
フクロウらしく首を回したかと思うと、「おかえりなさいませ。エレオノールさま。カトレアさま。ルイズさま」と
羽を掲げて優雅に一礼した。
「トゥルーカス、ただいま戻りました。まだ母さまはおきてらっしゃるの?」
「はい、エレオノール様、奥さまは、晩餐の席で皆さまをお待ちでございます」
「父さまは?」
「旦那さまは、明日お戻りの予定にございます」
エレオノール達は慣れているのか、特に驚きもせずにトゥルーカスと呼ばれたフクロウと会話をしていた。ただ、母親が
待っていると聞いた時、膝枕のルイズがビクッと硬直したことにR-シロツメグサは小首をかしげていた。
馬車はそんな乗客の思いも知らずに、大きな跳ね橋を渡り、城門を抜けて城に入っていく。
ルイズ達は荘厳な大広間を抜け、いくつもの豪奢な飾り付けをした廊下、部屋を抜けて晩餐の場となる
ダイニングルームに案内された。
そこには壁に微動だにせずに張り付いた給仕たちと、やたらに装飾過多で巨大なテーブルがあったのだが、
上座に座っているエレオノール似の四十代程に見える圧倒的な存在感を誇る女性の前では、道端の石ころほどしか
注意が向かなかった。
自然と娘たちの姿勢が正され、表情が引き締まっていく。
「母さま、ただいま戻りました」
「お帰りなさい、エレオノール、カトレア、それとルイズ」
「た、ただいま戻りました、お母様。」
深夜にも関わらず、正装をして鋭い視線を娘たちに向けるラ・ヴァリエール公爵夫人はエレオノールを数段上回る
硬質の雰囲気を身にまとっていた。まるで抜き身の真剣のような。
ゆっくりと吟味する様な視線がルイズの顔で止まり、ルイズは居心地悪そうに体をすくませた。
その横に立っているR-シロツメグサに向けられた視線に、微かに戸惑いが浮かんだが、結局何も言葉にはしなかった。
「よく戻ってきました。明日になると思っていましたが、これほど早く帰ってくるとは思っておりませんでした。
とりあえず、食事をとって今日はゆっくり休みなさい」
ヴァリエール公爵夫人の宣言で時間が動き出し、それぞれの席に座ったルイズ達に給仕が前菜を運んできた。
食器の音と、シロ姉がルイズに質問する声と、それにルイズが答える小さな声だけがその世界の音楽だった。
何かに抑えつけられた様な雰囲気の中、食事の時間が過ぎて行く。
結局形ばかりの挨拶をしただけで、公爵夫人は自室に引っ込んだ。
こんな深夜まで食事もとらずに待っていること自体が、母親としての愛情の表れであるのだが、それを吹き飛ばすような
圧力にさらされる娘たちは、露とも思わずいっせいにため息をついた。

「ルイズお嬢様、あの、こちらの方のお部屋はいかがいたしましょう?」
自分達の部屋に引き揚げようとした時、初老の執事の一人がそっと寄ってきて困惑した顔をルイズに向けた。
「あ、え、えーと」
「シロ姉さまはルイズと同じお部屋に通してあげてね」
咄嗟に返答に困ったルイズの横から、カトレアが笑いながら茶々を入れた。
エレオノールは何か言いたげな視線を向けたが結局何も言わずにさっさと部屋から出て行った。
「ち、ち、ちぃ姉さま!!」
「あら、ちがうの? 学院では同じお部屋でしょう?」
「え、あ、あ、ま、まぁ、そうだけど」
真っ赤になって慌てるルイズを見つめながら、カトレアは楽しげに笑う。大好きな姉にからかわれ、怒るに怒れない
ルイズは目を白黒させた後、ふいっと顔を逸らせた。その様子を静かに見ていたシロ姉は、捨てられた子犬のような
目でルイズを見つめた。その視線に妙な罪悪感を感じてしまったルイズは、嫌な予感を覚え引き攣った笑みと共に
背筋に一筋の嫌な汗が流れていくのを感じた。
「……イチヒコと一緒がいい」
「うっ、し、シロ姉?」
「イチヒコは嫌?」
「い、いや、じゃないけど……」
シロ姉の形の良い唇から拗ねた様な声が響き、にじりにじりと近寄る妙な圧迫感に、ルイズが引き攣った笑顔のまま
たじたじと後ずさる。
「そういうことらしいから、よろしくね」
「はい、かしこまりました。カトレア様」
そんなルイズとシロ姉の様子が、楽しくてたまらないようにくすくすと笑うカトレアに執事が深く頭を下げた。
「ち、ちい姉さま!」
「なあに?ルイズ」
「あとでお部屋にいってもいい?」
「ええ、いいわ、つもる話もあるし、いらっしゃいな。シロ姉さまもお越しください」
ルイズの呼びかけに軽く振り返ったカトレアはシロ姉に軽く会釈をしてからダイニングルームから出て行った。
「……さ、シロ姉も行きましょ」
後に残されたルイズは、なぜだか妙におかしくなって笑いながらシロ姉の手を引いた。
よくよく考えれば、学院の寮と何も変わらない。いつもの生活で、ちょっと場所が変わっただけ。
そうだ、自分の部屋や子供のころの話をシロ姉にしてあげよう、なかなか聞く機会がないシロ姉の昔の話も
ひょっとしたら聞けるかもしれない。
振り返ってみたシロ姉は、いつもより優しげな表情をしているように思えた。

「もう、エレオノール姉さまはいっつもわたしをいじめるの」
部屋の主の性格や嗜好がよく分かる部屋。カトレアの部屋は幾多の青々とした鉢植えや放し飼いになっている鳥や
小動物が縄張りを主張する、庭園のような雰囲気があった。
その部屋に入るなりお気に入りのソファを見つけ、ネグリジェにガウンを羽織ったルイズが、勢いよく座り込んだ。
そして開口一番に口を尖らせた。
部屋の隅に置いてあるワゴンから果実水の入ったポットを取り出して、三人分のグラスに注いでいた、似た様な格好の
カトレアがそれを聞いてコロコロと笑う。
「あらまあ、ルイズ、小さいルイズ、エレオノール姉さまは感情表現が苦手なのよ」
「うそ」
カトレアが差し出したトレイの上から、自分のグラスを受け取ったルイズは、拗ねる様に傍にあったソファを抱え込んで
顔を埋めた。
「ほんとよ、ルイズ。小さなルイズ。この家のみんなは、あなたのことが好きなのよ
あなたが生まれた時のエレオノール姉さまの慌てっぷりったら、それは楽しかったわよ?
よちよち歩きするころに、屋敷中の花瓶を片付けさせたのもエレオノール姉さまだし、泣きだした時に大慌てで
乳母を呼びに行くのもエレオノール姉さまだったのよ?」
「……ほんとに?」
「ええ、だからエレオノール姉さまを嫌いにならないで上げてね」
自分の場所に座ったカトレアは、幾分真剣なまなざしになった。
姉の雰囲気の変化を察知したルイズは、抱え込んだソファから目だけを出してカトレアを見つめた。嘘や冗談を
言っているのではないとわかったが、魂に刻みつけられた様な固定観念をすぐに変えることはできず、う゛~と唸って、
再びばふっとソファに顔を埋めた。
カトレアはそんなルイズのことを見て、違和感を感じた。悪い意味ではなくいい意味の”違い”。
それをを肌で感じた。
今までのように何かに追いかけられているような焦りの感情や、癇癪じみた印象がかなり落ちている。
魔法が使える様になったからなのか、末の妹にある種の落ち着きが生まれているのがわかった。
学院に入学して、ゼロという不名誉な二つ名をつけられ、帰ってくるなりこの部屋に飛び込んできて
塞ぎこんでいたルイズの面影は、もうほとんどない。
それも、ルイズが召喚したという目の前の女性のおかげなのだろうか。
母のような強烈な存在感があるわけでもないが、どうしても目が追ってしまう。
植物や動物をずっと見てきた自分には分かる。
彼女は普通の人にはない、静寂な泉のように透きとおるような雰囲気がある。
それは来るときの馬車でも感じていた。
ルイズ達は気がついていないようだったが、この目の前の女性に対しては動物達が警戒しない。
匂いや普段見て慣れているルイズ達ならともかく、はじめて見た人間相手に無警戒だったのはシロ姉と呼ばれる女性
ただ一人だった。
正直言って、ここまで”雑音”の少ない純粋な人は初めてだった。
まるで精霊のよう……精霊? まさか? ルイズは精霊を召喚したの?
そんな取り留めもない考えがカトレアの脳裏を駆け巡る。
あわてて、”シロ姉”に目をやるとルイズの横に座っているその女性は、ソファを抱えたルイズの脇をちょんちょんと
つつきながら穏やかな視線を注いでいた。

――このひとなら私の代わりにルイズを支えてくれる。

唐突にそんな言葉が浮かんできた。なぜ、そんな事を唐突に思ったのかわからないが、ルイズが使い魔として
召喚したのも偶然ではないのかもしれない。

「シロ姉さま」
いつの間にかルイズに抱きつくようにじゃれているシロ姉に、カトレアが居住いを正して真剣な視線を向けた。
ふっと顔をあげたシロ姉の隙をついてルイズが抜け出す。
その眼を見た時に、やはりこのひとをルイズのように呼び捨てにすることなどできない。カトレアは改めてそう感じた。
「何? カトレア」
「シロ姉さまは、ルイズの恋人ってことになるのかしら?」
「そう」
抜けだしたルイズに、ちょっと残念そうな表情を向けていたシロ姉は、カトレアの質問に対してごく当たり前のように
答えた。
「ち、ちょっと、シロ姉!」
「……イチヒコ、私嫌い?」
「え、い、いや、そんなことないけど……」
「私はイチヒコが好き、だから問題ない」
その会話にようやく気がついたルイズはあわてて両手を振って邪魔しようとした。が、いつものように、捨てられた
子犬のような雰囲気をまとって上目づかいにルイズをじっと見つめ、微かに震えるシロ姉の声にあえなく陥落した。
目を閉じ、手を胸に当てたシロ姉の、間違えようのない情熱的な宣言に、恥ずかしいやら嬉しいやら照れくさいやらで
顔が熱くなり、ゆでダコのように上気したルイズは、もともとの発端となった実の姉に矛先を向けた。照れ隠しとも言う。
「え、い、いや、だけど……もう、ちいねえさま!」
その光景を微笑ましそうに見ていたカトレアが不意に体を折り曲げて激しく咳き込んだ。
その咳の激しさに、一瞬で顔面を蒼白にしたルイズが慌ててカトレアに近寄って体を支えて背中を摩る。
「ちいねえさまっ、ちいねえさまっ、大丈夫!?」
「……ええ、大丈夫よ、ルイズ」
「お医者様は?」
しばらく咳き込んだカトレアは、ルイズの差し出した水を飲んでようやく一息をついた。
軽く汗をにじませた額をいつも手元に置いてあるタオルで拭きながら、ルイズを安心させるように微笑む。
「何人もの高名なお医者さまをお呼びして、強力な水の魔法を試したわ。でも魔法でもどうにもならないんですって。
体の芯からよくないみたいで、水の魔法でもどうにもならないんですって」
「そんな……治らないの……?」
「ルイズ、小さなルイズ、そんな顔をしないで。こんな体でも私は楽しいのよ」
カトレアの言葉に愕然となったルイズがわなわなと震えた。手に持ったグラスの中の水がこぼれそうな程揺れる。
そんなルイズの髪を優しくカトレアが撫でて、そっと抱きしめた。
涙をにじませたルイズの横顔を見たシロ姉が悲しげな表情で眼を伏せた。
「イチヒコ?」
「……何、シロ姉?」
「泣いてる?」
「泣いてなんかない」
「イチヒコ。カトレア治って欲しい? カトレア治ったら、喜ぶ?」
「え、う、うん」
「……見たくない。私は、悲しんでいるイチヒコを見たくない。だから治す」
唐突なシロ姉の言葉に、戸惑いながら顔をあげたルイズとカトレアは顔を見合わせた。
高名な水の医者でも駄目だったのに、なぜ? と言う想いがカトレアの、ひょっとしてシロ姉だったら、という想いが
ルイズのそれぞれの表情を変化させる。
諦観と希望の二つの顔が見つめる中、その場に置いてあるカトレアのグラスをひょいっとつかんだシロ姉の
額のクリスタルが煌く。
「え? シロ姉さま?」
「これ飲んで、少し、じっとする」
カトレアがその光景をみて思わず口に手を当てた時には、いつものシロ姉に戻っていた。すっと目の前に突き出された
グラスの中は、はいっていたはずの果実水ではなく、なにかとろりと粘度のある白濁した液体に変わっていた。
シロ姉は真剣な表情だったが、躊躇するカトレアは引きつった笑顔を浮かべ座ったまま後ずさった。
「え、え、え?」
なかなか吹っ切れないカトレアに業を煮やしたのか、シロ姉はカトレアの肩を掴み、自らグラスの中身を口に含んでから、
カトレアを押し倒す様に抱きつき、口移しで液体を飲ませた。
「ん、ん、んー」
いきなりの行為に目を見開いていたカトレアだが、シロ姉の舌にこじ開けられた唇からどろりとした液体が口の中に
広がっていくのを感じて目を閉じた。
ねっとりとした感触と、口の中の液体を押しこむように蠢くシロ姉の舌。そして横目に見えている、顔を真っ赤にして
ソファで口元を隠しながらも、食い入るように眼を見開いて見ているルイズの前での行為に、治療目的なのだろうと
推察はついても、顔の火照りは誤魔化せなかった。
口の端から洩れでた液体が、首筋へと流れていく感触も、ルイズの痛いような視線の前では些細な問題でしかなかった。
だが、口の中にまとわりつく液体を苦労して嚥下しても、シロ姉の行為は止まらなかった。
「ひぅっ」
突如、下腹部から背筋を電気が駆け登る。
「ひんっ、ぅー、んー、んー、あ、ぁ」
いつの間にか、シロ姉の手がネグリジェの裾から秘所にあてがわれていた。手の侵入を防ぐように太ももを擦りわせ、
空いた手で必死にシロ姉の手を抑えたが、その抵抗を嘲笑うかの様にシロ姉の手が薄い布地の間に差し込まれていく。
シロ姉の指が秘裂に届いた瞬間、水飴を練った時の様な水っぽい音がカトレアの耳に響いた。
自分が濡れていることの恥ずかしさと同時に、こらえられない程の快感が腰を痺れさせながら背筋を登っていく。
顔を真っ赤にさせたカトレアが、びくんと背を反らせて目を見開く。
「ーっ!」
何かが侵入してくる。カトレアは、自分の秘裂を押し割ったシロ姉の指の間から、明らかに指ではない感触のモノが
うねる様に入ってくるのを感じた。太くはないので痛みは全然なく、快感だけが増幅される。
この背徳的な状況で頭が真っ白になって何も考えられなくなり、全身のしびれが、眼をとろんとさせ、いつの間にか
シロ姉の口が離れていることも、自分がすがりつくようにシロ姉にしがみ付いている事も、気がつかなかった。
「あ、ん、あ、あ、あ、あぁ……はぅん」

甘い、切なくなるような吐息が自分の敬愛する姉の口から漏れている。
シロ姉とカトレアの行為にルイズは目が離せなかった。
抱きしめた大きなソファに顔を埋めて、温泉に長時間使った時のように火照った顔が妙に気恥ずかしい。
それと同時に、なんでシロ姉がカトレアにキスをしてるのか理不尽な怒りがわいてきた。
(なんでなんでなんで? シロ姉は私が好きって言ったのに、なんでちいねえさまにキスしてるのよっ!)
目の前の光景に上気して、脳裏を駆け巡る嫉妬がその身を焦がしていた時に、カトレアから身を離したシロ姉が
抱きついてきた。
「きゃっ」
「……直した」
ソファごとルイズを抱きしめたシロ姉は、いろんな感情がないまぜになってソファで顔を隠したルイズの髪を
優しく撫でた。
「え?」
シロ姉は、治療をしてたんだ。
やり方はどうであれ、その善意を否定する様な想いが、自身の嫉妬心がひどく薄汚いものに思えたルイズは
シロ姉の顔がまともに見れなかった。
「イチヒコ、大丈夫、私はイチヒコだけ」
微かな笑みを浮かべたシロ姉は、そう言ってルイズを抱きしめる力を強めた。
涙で滲み始めた目のルイズの頬に手をやったシロ姉は、そっと顔を向けさせて、その唇についばむ様なキスをする。
その優しい感触に目を開いたルイズはどアップで映るシロ姉の静謐な顔を見つめた。
「今日の”お願い”のちゅー」
真剣な表情のシロ姉に、吹きだしたルイズは、笑い泣きの表情でシロ姉の首に抱きついてキスをした。
初めてルイズの方からシロ姉にしたキスだった。
それはとても静かなキスだった。

くったりと倒れているカトレアに、毛布片手にルイズが近寄った時、その気配を感じたのかカトレアが身を起こした。
きょろきょろと辺りを見渡したあと、人差し指を口に当て顔をあげてなにやら考え込んでいたカトレアが、
ぼんっと音が出そうなくらい顔を真っ赤にして俯く。
「あ、あぅ……」
「ちいねえさま、体の具合はどうですか?」
ルイズは、そんな様子をことさら気にしないようにして、毛布をカトレアに羽織らせた。
末の妹のその言葉で、改めて目を瞑って自分の体と会話したカトレアが、鳩が豆鉄砲を喰らった時のような表情をした。
「あ、楽になってる……わ」
「……よかった」
カトレアが目を瞑った時に、はらはらとしながら様子を窺っていたルイズは、その答えに安堵のため息とともに、
眼尻に浮いた涙を指でぬぐった。
「イチヒコが喜ぶと、嬉しい」
「……ぅぅぇぇん――っ、ぁありがとうぅしろねぇえぇ」
そのルイズの様子を見ていたシロ姉が、後ろからそっと抱きしめると、ルイズは涙をぼろぼろと零しながら声にならない
声で泣き出した。
「ありがとうございます、シロ姉さま」
明らかに、”治療”前と違って、体が楽になったカトレアは両手をついて頭を下げた。
「イチヒコのお願いだったから、直しただけ、別にカトレアの為じゃない」
「それでも、ありがとうございます」
シロ姉は、胸に抱いているルイズの髪をゆっくりと撫でていた。特に感情もこもっていない声の返事だったが、
それでもカトレアは裏に隠れた配慮を感じていた。
――ああ、このひとは感情を出すのが苦手なんだ。
と。

長旅で疲れていたのか、いつのまにか腕の中で寝息を立て始めたルイズを愛おしげに見ているシロ姉から、カトレアは
細かな話を聞いた。
『カトレアは肝臓に遺伝性の奇形があった。水の魔法?では、壊れたものを元に戻すことはプログラムされている。
でも、もともと壊れているものを直すところまでは、プログラムされていない。
だから、ドレクスラーで肝臓を造り替えた、ついでに肺や気道の修復もしておいた』
カトレアには分からない単語や概念が多々あって、正直言ってほとんど何を言っているのか理解できなかった。
が、寝ているルイズを抱きかかえて、部屋を出て行く際に言い残したシロ姉の一言ですべてを理解した。
『すぐに元気になる』
トリステインのみならずハルケギニア中の高名な水のメイジがさじを投げた病気を、末娘の使い魔という位置づけの
存在が事も無げに治癒してしまったことを。
それも、ルイズが悲しむから。たったそれだけのことで。

カトレアは、ルイズたちが去って静かになった部屋の中で窓際に座って月を見上げた。視界いっぱいに広がる
雲ひとつない夜空に青と赤の月が煌々と輝いている。

――まるで、シロ姉さまとルイズみたい。

ふと心に浮かんだ言葉だったが、それが世界の真理なのかもしれないと、何か発見したような気持ちになった。
……シロ姉さま、ルイズをよろしくお願いします。
二つの月に向かってカトレアは自然と手を組んで祈っていた。

ぽんぽんぽん、ぽ、ぽぽぽぽぽん♪ ぽかぽかぽん♪ ぽ、ぽぽぽぽぽん♪

I see the moon,
私は月を見ていたの
And the moon sees me,
月は私を見ていたわ
God bless the moon,
神は月を守護して
And God bless me.
神は私を守ってくれるの