るるる-こねた

そのいち

フェオの月(四月)最後の虚無の曜日を明日に控えた夜。
夜の食事が終ったルイズとシロ姉は、自室に戻っていた。
アルヴィーズの食堂では、いつものように頭の上でさんしょうおが暴れて、ルイズの髪の毛と格闘していた。
既に慣れっこになってきたのか、周りの友人は、ちらっと視線を送るだけに、何も言わなかった。
隣に座っていたキュルケ達がワインを開けて、グラスを持ち出してきた時点で、ルイズは危険を感じた。
これ以上ここにいると、どんな酒の肴にされるか分からない。キュルケがシロ姉に、あなたも飲む?とか言ってる所を、
もう帰るからと言ってシロ姉の手を引っ張って帰ってきた。
部屋に備え付けの水差しからグラスに水をそそいだ。
「シロ姉、ちょっとこの虚無の日曜日に、お買い物に行きたいんだけど?」
机に座って本を広げようとしていたシロ姉の横に行ってグラスを手渡した。
「……買い物?」
微笑んで、ありがとう。と言ってグラスを受け取ったシロ姉が、ルイズの言葉に小首をかしげた。
「そう。ちょっと服をね、買いに行きたいの」
「……?」
ルイズは、ふとクローゼットに目をやった。
学院の洗濯係に下着や服の洗濯を依頼しているが、しばらく新しいのを買っていないことに気が付いていた。
この春の使い魔召喚に向けて、猛勉強していたからなのだが、さすがに二か月も同じものを使いまわしているのは
まずいかもしれない。
小首をかしげて不思議そうにしているシロ姉に目を戻して、ふと、重大なことに気がついた。
「そういえば、シロ姉って服どうしてるの? っていうか着替えは?」
そう、ルイズはシロ姉が着替えをしている。というより、代えの服を見たことがない。
というより、自分が用意するべきものなのに、すっかり忘れていた。
血相を変えて詰めよったルイズに、シロ姉はようやく納得したのか、晴れやかな笑顔を向けた。
「……着替え? ……大丈夫。ドレクスラーで消毒、再構成してるから清潔」
「?」
シロ姉の言葉にルイズは戸惑った。なんとなくシロ姉の言う”どれくすらー”は魔法みたいなものかなと、思っているが、
消毒、再構成って?
そんな便利な魔法があるのだろうか?
錬金とかで服を作ることもできないし……
ルイズが難しい顔をしていると、ぱっと閃いたかの様にシロ姉が微笑んだ。
「……いいこと考えた。イチヒコの服、作る」
「つ、作るって」
シロ姉の満面の笑みに、なぜだかルイズは嫌な予感がした。
口元をひきつらせて、立ち上がるシロ姉に気圧されるように一歩後退した。
シロ姉は、ふっと笑ってマントを外した。そのマントが見る間に消えていく。
「……作るから、とりあえず脱ぐ」
「ち、ち、ちょっと、な、なんでシロ姉が脱ぐのよっ」
ノースリーブで体のラインがきっちり出る格好になったシロ姉が、逃げようとしてベッドにつまずいたルイズを抱きかかえた。十分支えれるはずだったが、シロ姉がルイズを抱きしめた格好のままベッドになだれ込んだ。
「いい、大丈夫。きれいな服作る、イチヒコ、早く脱ぐ」
シロ姉が、少し潤んだ瞳で、下になっているルイズの首筋にキスをしながら服を脱がせていく。
「や、や、やっぱりぃぃぃ~」
じたばたと暴れていたルイズも、やがて抵抗がなくなって行った。代わりに艶っぽい声が漏れる

ゆっくりと魔法学院の夜が更けていく。
いつもの夜だった。